そこで腎センター外来に所属する主任看護師で、腎代替療法専門指導士である関真奈美さんが、その後の対応を引き受けることになりました。関さんはAさんが外来を受診するときに別途時間をとり、Aさんが迷う理由を聞いたり、不安や疑問について答えたりということをしながら、本人が納得いく選択ができるよう、寄り添いました。

 血液透析は血液をからだの外に出し、「人工腎臓(透析器)」を通じて毒素や余分な水分を取り除いた後に再び体内に戻すものです。腹膜透析は腹部の内臓を包む「腹膜」の中に透析液を入れて、浸透圧(濃度の差)で毒素などを染み出させ、透析液を数時間ごとに交換する方法です。

 治療の効果は同じですが、それぞれメリット、デメリットがあります。例えば血液透析は主に透析クリニックで受ける治療で、スタッフに処置を任せ、透析を受ける形になりますが、週に3回(1回4時間前後)の通院が必要です。一方、腹膜透析は自分の腹膜を使って自宅でおこなう透析です。透析バッグのセットや交換は自分で、あるいは家族などのサポートでやらなければなりませんが、この処置にかかるのは1回30分程度で、これ以外の時間は自由に動けますし、外出も可能。腹膜透析をしながら仕事もできます。

 Aさんは最近、足腰が弱くなってきており、外来には常に家族が付き添っていました。

 このため、通院を考えている透析クリニックには家族が送り迎えをする必要がありました(マイクロバスや車で送迎をしてくれるところもあります)。

東邦大学医療センター大森病院腎センターの主任看護師で、腎代替療法専門指導士である関真奈美さん
東邦大学医療センター大森病院腎センターの主任看護師で、腎代替療法専門指導士である関真奈美さん

「お話をする中で、ご家族は透析クリニックの送迎に比べ、自宅で腹膜透析のバッグをセット、交換する作業をサポートするほうが負担が少ないと考えていること、Aさんも『家族に負担をあまりかけたくない』と気にしていることなどがわかり、最終的に自宅で治療ができる腹膜透析を選択されました」(関さん)

 関さんが持つ腎代替療法専門指導士という資格は、腎代替療法の適切な選択を推進するための専門職。日本透析医学会、日本腹膜透析医学会、日本腎不全看護学会、日本臨床工学技士会などの11学会が連携して作った、「日本腎代替療法医療専門職推進協会」によって21年に資格制度が立ち上げられました。

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腎代替療法専門指導士の資格をとれるのは