15日、和歌山市・雑賀崎漁港の演説会場で岸田文雄首相に手製爆弾が投げつけられた事件では、幸いにも大きな被害が出なかった。事件が報じられると、岸田首相が無事だったことへの安堵の声はもちろんあったが、一方で「そりゃ、そうなるのも納得だわ」という、突き放したようなコメントもネット上にあふれた。これは何を意味するのか、メディア社会学が専門の立教大学の砂川浩慶社会学部長・教授に聞いた。
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<爆弾犯は許せないが、そうされても仕方ないほど今の自民党がやっていることはひどい>
<政治家が犯行に対して『民主主義への挑戦だ』と言えるほど、この国に民主主義が根づいているのか。国民の声を聞いて増税をやめろ>
事件がネットニュースで報じられると、爆弾を投げつけられた岸田首相が行ってきた政治に対する不満をぶつけるようなコメントが数多く書き込まれた。
「これまで相当たまってきた不満が一気に噴き出した感じです。岸田首相への同情はあまり感じられません。というのも、岸田内閣は昨年12月に国会論戦なしに防衛費増額を決めてしまい、これから国民負担が増えるわけです。(2021年の自民党総裁選の際に)“人の話をよく聞きます”って言っていたけれど、このおじさん、ぜんぜん聞く耳を持たないじゃないかと、みんなが思っている」
さらに砂川教授は、事件の背景がよくわからないことがネット民の注目が襲撃犯である木村隆二容疑者に集まらない理由でもあるという。
「私は普段、木村容疑者とそれほど年齢が違わない若者たちと接しているわけですが、政治に対する関心は低い。20代前半の人たちの不満の矛先が政治に向かう、というのは珍しい。24歳の彼が同世代のなかで、どういうポジションにいるのか、正直よくわからない」
■戸惑う既存メディア
今の20代の若者の青春時代は、安倍晋三政権時代と重なる。
「なので、良くも悪くも安倍元首相の支持層であったりするわけです。ところが、木村容疑者は選挙制度に対して裁判を起こすくらい政治に対して強い不満を持っていた。けれど、今回の事件について本人は黙秘しているので、どうとらえていいのか、誰もよくわからない」