2軍のエースとして90年に7勝1敗で最高勝率、93年に最多勝(9勝)を記録したが、肘を痛め、95年に外野手転向。打者1年目に、いきなりイースタンリーグ4位の打率.301をマークした。

 そして、97年9月17日の横浜戦、「ファームでけっこう頑張っていたみたいだからね」と長嶋茂雄監督に認められた渡辺は、6回に桑田の代打として12年目の1軍初打席に立ったが、見逃し三振。ここから3打席連続三振を喫するも、同24日の阪神戦で川尻哲郎から中前にプロ初安打を放ち、「甲子園で打ててうれしいです」と笑顔を見せた。

 だが、現役最終年の14本も含めて2軍で二桁本塁打4回の強打者も、巨大戦力の壁を打ち破れず、00年オフ、1軍通算出場13試合(18打数3安打、打率.167)で、15年間の現役生活を終えた。2軍で好成績をキープしても、33歳という年齢でチームに残留するのは、さすがに厳しかったようだ。

 引退後も球団に残り、現在はスカウトとして腕を振るっている。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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