そもそも会社本店があるとされる場所に本当にY社があるのかも定かでなく、対応した女性の受け答えからしても、果たしてY社が信用をおける会社なのか疑いの目も向けたくなる。そうなると、SNSなどでも上がっていたが、安全保障に影響を及ぼすような転用、転売に対する懸案も出てきかねない。

 何も明らかになっていないこの会社は大丈夫なのだろうか?

 松野博一官房長官は2月13日の記者会見で、屋那覇島について聞かれると、安全保障上、重要な土地の利用を規制する「土地利用規制法」の対象ではないと説明し、

「政府としては、関連動向について注視する」

 と述べた。

会見する松野博一官房長官=2023年2月13日
会見する松野博一官房長官=2023年2月13日

 自民党元職員で政務調査会を長く担当し、防衛や安全保障の著書がある政治評論家の田村重信氏は、

「SNSなどで広がっている『買ったのが中国人だからけしからん』『軍事転用など何をするのかわからない』という声があるが、日本人も海外で土地を買っている。中国人だからだめというのはいかがなものか。アメリカは中国に対し、安全保障の観点から経済的な圧力もかけているが、日本にとっては隣国であり、結びつきの度合いが違う」

 とした上で、こう指摘する。

「この無人島だけでなく、今後もこのような事態が次々に起こる可能性はあるので、法整備を急ぐ必要がある」

 今回の件が報道されると、奥さんには多くの問い合わせがあったという。奥さんがこう話す。

「今回の中国人女性の動画やSNSを見て、売らなきゃよかったのでは、との気持ちもあります。今後、大きなトラブルなどにならなければいいのですが。沖縄県民としては心配です」

 一方、伊是名村には一時期、問い合わせの電話が殺到したという。担当者によると、「中国系の企業に売ったというのは本当か」「なぜ売ったんだ」「けしからん」などと、村が売ったと勘違いしたり、罵声を浴びせたりする電話もあったという。

 担当者は「今回の企業からは、屋那覇島で開発をするという話は何も聞いていません。村としては様子を見つつ、今後、こうしたことがまた起こるかもしれないので、何かしらの対策を考えたい」としている。

(AERAdot.編集部・今西憲之、矢崎慶一)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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