屋那覇島=沖縄県伊是名村
屋那覇島=沖縄県伊是名村

 中国人女性が「沖縄県の無人島を購入した」とSNSに投稿したことが大きな話題となり、さまざま議論がわき起こっている。法律論、安全保障論、感情論……。購入したのが中国系の企業だとわかるとさまざまな臆測を呼び、役所には問い合わせが殺到した。購入した企業はどんな会社なのか。調べてみても会社の様子がまったく見えてこない。

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 2月3日、中国の複数のニュースメディアが、34歳の中国人女性が沖縄県にある無人島を購入した、と写真付きで報じた。

 真っ青な海や空と島が写った写真がSNSで拡散されると

「私も買いたい」「無人島のオーナーになるなんてすごい」

 といった憧れや羨望(せんぼう)の声がある一方、

「米中が対立しているなか、中国人の手に無人島が渡ってもいいのか」「中国が無人島に国旗を立てたらどうする」

 と政治的な懸念や安全保障面を心配する声も多くあった。中国のSNSでは「日本に中国の領土が増える」などという投稿もあった。

 中国人女性が「購入した」といった島は、沖縄本島の北側に位置する屋那覇島(沖縄県伊是名村/74万平方メートル)の一部。2021年2月2日に登記を完了し、永久使用権を得たと中国のメディアで答えていた。

 屋那覇島の不動産登記簿を見ると、同じ日に中国系企業のY社(東京都港区)が買っていた。Y社の法人登記簿には、その女性と同姓で、女性とみられる名前が役員欄にあった。他の役員も中国系の氏名だった。

 伊是名村の担当者の話では、Y社が購入したのは、島の約26%を占める村有地以外の部分の半分程度。残りは、国有地や個人所有だという。

 屋那覇島に行くには、沖縄本島のリゾート地・今帰仁村からフェリーで約1時間かけて伊是名島に渡り、そこからチャーター船で10分ほどで着く。

 伊是名村によると、屋那覇島は水道やガス、電気などが通っていない無人島だ。人気の釣り場として知られており、釣り人が多く訪れたり、伊是名島民が潮干狩りやバーベキューで訪れたりするという。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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