近年では多くのがんで手術の低侵襲化が進み、子宮頸がんでも2018年に腹腔鏡手術が保険適用されています。ただし、欧米の臨床試験で「子宮頸がんの広汎子宮全摘出術において、腹腔鏡手術は開腹手術と比較して局所の再発率、生存率が不良だった」という結果が報告され、日本では子宮頸がんに対する腹腔鏡手術は2センチ以下の早期がんに限定するなど慎重に検討する病院が多く、実施する病院は限られています。希望する場合は、手術数が多いなど「実績があり経験豊富な病院を選ぶことが重要」と今回取材した2人の医師は話します。

 また、子宮頸がんでは放射線治療という選択肢もあり、I期、II期では手術に代わる根治治療として選択されることも。東邦大学医療センター大橋病院産婦人科教授の田中京子医師はこう話します。

「手術と放射線で治療成績に大きな差はないとされています。頸がんは、とくに扁平上皮がんでは放射線の効果が得られやすく、手術ができないIII期に加え、II期でもやや進行したIIB期では放射線治療を選択するケースもあります」(田中医師)

 手術には、がんを取りきることができる、がんの大きさや転移の有無などから再発リスクを予測できるなどのメリットがありますが、子宮を摘出する大がかりな手術であり、術後にむくみや排尿障害などの合併症が起こることも。一方、放射線治療にも副作用や後遺症はあります。

 治療選択で迷うのは、患者が「何にこだわるか」によると田中医師は話します。

「多くの人は、がんを治すことを最優先に考え、とにかく根治を目指せる治療を選びます。一方で、大きな傷を残したくないと思い、なんとか腹腔鏡手術ができないかという人もいますし、妊娠の機能を残したいけれど再発リスクを心配して迷う人もいます。手術と放射線治療の治療効果がほぼ同等なら、術後の合併症がいやな人や、高齢でからだへの負担が大きい治療は避けたい人は放射線を選びますし、若い人は卵巣機能を残せる可能性があるからと手術を選ぶこともあります。年齢やライフスタイル、病状やからだの状態などによって望む治療は異なると思います。それぞれのメリットとデメリットを理解した上で、医師とよく相談して決めることが大切でしょう」(同)

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子宮体がんは細胞診の精度が7割ほど