上皇さまは昭和の時代から、沖縄独特の定型詩である琉歌も学んできた。

 皇太子時代、沖縄戦最後の激戦地・糸満市にある平和祈念公園に建てられた魂魄之塔を訪れ、琉歌を詠んでいる。

<花よおしやげゆん 人知らぬ魂 戦ないらぬ世よ 肝に願て>

 次のような意味だと解説されている。

「花を捧げます。だれにも知られず戦場に散った無名の人々の魂に。いくさのない世を願いながら」

 上皇ご夫妻の思いは、令和の皇室に受け継がれている。

 令和の天皇陛下秋篠宮さま、そして黒田清子さんは幼少期から、沖縄の中学生が全国各地を訪れた「豆記者」の少年少女と交流し、歴史や文化を学んできた。天皇陛下は、27歳の時に初めて沖縄を訪れている。

 豆記者との交流は、ご一家で続けた。秋篠宮妃の紀子さまは、琉球舞踊を習った。

 そして令和の天皇陛下と皇后雅子さまは、今年10月に沖縄を訪問した。天皇陛下は、戦後生まれの天皇として初めて沖縄を訪問し、沖縄戦の遺族らと対面した。

 美智子さまが思いを強くするのは、日本の伝統文化の継承だ。保阪さんと半藤さんが御所を訪ねた際、美智子さまは養蚕についてこう話している。

「今でも皇居で養蚕をやっているんですけれど、日本の若い人にも関心を持っていただくといいのですが……。いま養蚕所で一生懸命やってくれているのはブラジルで育った二世の方たちです」

 御養蚕といえば、歴代皇后の大切な務めのひとつだ。平成の時代は、秋篠宮家眞子さんが幼いころから、美智子さまのお手伝いをしていた。

 美智子さまが幼い眞子さんにあてた手紙が公開されたこともある。

<眞子ちゃんは、ばあばがお蚕(かいこ)さんの仕事をする時、よくいっしょに紅葉山(もみじやま)のご養蚕所(ようさんじょ)にいきましたね(略)>

 天皇ご夫妻の長女の愛子さまも、学習院初等科3年の時に授業で蚕をもらって以来、毎年、卵を採ってお住まいで育てている。今年は、皇后の雅子さまと一緒に天皇陛下と愛子さまが養蚕の作業に取り組む写真も公開された。

 上皇さまは、来年には90歳の卒寿を迎える。平成の天皇と皇后が積み上げたものは、令和の皇室に受け継がれている。

(AERAdot.編集部・永井貴子)