小川:いやあ、担当編集者に「クイズ番組の出演は全部断ってください」って伝えています(笑い)。おもちゃにされるだろうし、視聴者にとってわけのわからない作家をいじっても面白くならないですよ。僕がクイズ番組に出たら、面白くするにはめちゃくちゃ正解するしかないけど、それはできないから。

 僕の中で、クイズ番組に関する好きな話があるんです。石田衣良さんが『娼年』の宣伝でクイズ番組に出られた時のこと。正解したらランクが1個上がって、不正解だったらランクが1個下がる。衣良さんは答えがあまりわからないから、ずっとボケッとしていたところ、ほかの出演者たちが高レベルな争いをした結果、誤答が重なり、衣良さんは立っているだけで優勝した(笑い)。衣良さんっぽいなって。

■伊坂幸太郎さんとの縁

杉江:『君のクイズ』の本の帯にはいろんな方の名前があります。新川帆立さんとは対談され、佐久間宣行さんはプロデューサーで、山上大喜さんはクイズプレイヤー。その中でも伊坂幸太郎さんが書いている内容が面白い。

「面白すぎ!! こんなに興奮する謎に出会ったのは久しぶりでミステリーとして最高。小川哲さん、ほんとすごいな。」

 伊坂さんがワクワクしながら本作を読んでいるのがよくわかります。伊坂さんとの面識はありますか?

小川:一度もお会いしたことはないんです。でも、お世話になっている。伊坂さんが僕の本をいろんなとこで勧めているという噂は聞いていて。デビュー後1作目の『ゲームの王国』を発売してすぐ、何かのインタビューで伊坂さんが僕の名前を出してくれていたんです。ありえないこと。同時にその頃、宮部みゆきさんが読売新聞の書評でこの本のことを書いてくれてもいた。結果、伊坂さんと宮部さんのコメント帯が実現し、重版が叶った。

『地図と拳』は僕の中では、推薦コメントは必要ないタイプの小説だと思っていたので編集者に「コメントはやめてストロングスタイルでいきましょう」と言いました。でも『君のクイズ』は、より多くの人に読んでほしかったので、やれることを全部やろう!と。そんな話を担当編集者としているときに、伊坂さんが帯にコメントを書いてくださることになって。帯に掲載されている文章は短いバージョンですが、「頼まれてもいないのに、『推薦コメントを書かせて!』とお願いしてしまいました。」というのが入っている完全バージョンも版元の作ったページにあります。ぜひ、ご覧になってみてください。

(構成/長谷川拓美)