判決後、記者の質問に答える故赤木俊夫さんの妻の雅子さん。俊夫さんのマフラーを身につけ、裁判所を訪れたという=2022年11月25日
判決後、記者の質問に答える故赤木俊夫さんの妻の雅子さん。俊夫さんのマフラーを身につけ、裁判所を訪れたという=2022年11月25日

 学校法人「森友学園」との国有地取引を巡り、財務省の決裁文書の改ざんを命じられたことを苦にして自殺した、近畿財務局元職員の赤木俊夫さん(当時54)の妻雅子さん(51)が、改ざんを主導したとされる元理財局長の佐川宣寿氏に損害賠償を求めた訴訟の判決。大阪地裁は11月25日、佐川氏個人の賠償責任は認めず、請求を棄却。雅子さんの主張を退けた。

 判決後、雅子さんは報道陣に囲まれ、

「こんな判決で、残念でならない。必死で頑張ってきたのに。2年8カ月、命をかけて戦ってきた。夫には今日の判決を伝えられない」

 と無念さをにじませた。

 財務省の決裁文書の書き換えをめぐっては、安倍晋三首相(当時)が2017年2月、「(取引に)関与していれば首相も国会議員も辞める」と国会で答弁。同省が18年6月に公表した調査報告書によると、売却の決裁文書に書かれた安倍元首相の妻昭恵氏らの名前を削除するなど計14件の文書を改ざんしたとし、佐川氏が「改ざんの方向性を決定づけた」とした。

 そうした動きを受け、20年3月、雅子さんは、「真実が知りたい」と国と佐川氏を訴え、裁判が始まった。

 注目されたのは、俊夫さんが改ざんの経緯をまとめた「赤木ファイル」の開示と、佐川氏の証人尋問だった。

 ファイルについては、21年6月、大阪地裁からの求めで国が開示するところまで追い詰めた。そこには、赤木さんがなぜ文書の改ざんをするに至ったかが、詳細に書かれていた。

「(本省は)調書から相手方(森友)に厚遇したと受け取られるおそれがある部分は削除するとの考え。(中略)現場の問題認識として既に決裁済みの調書を修正することは問題があり行うべきではないと、本省審理室担当補佐に強く抗議」

 財務省が組織ぐるみで決裁文書の改ざんを強要したことが明らかになった。

 これが影響したのか、裁判で争う姿勢を見せていた国は、ファイルの開示から半年後の昨年12月に突如、請求を全面的に認め、約1億700万円の損害賠償を争うことなく支払う「認諾」という手続きを取り、裁判を終結させた。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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佐川氏「ご迷惑をかけた」