※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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歯科で歯科衛生士に口の中をチェックされたとき、「忙しかったのですか?」と聞かれたことはありませんか? 歯科衛生士によれば、「何かあったのですか?」「出張が続いていたのですか?」などと聞く場合もあるようです。これらのメッセージに込められている意味とは? なぜ、歯科衛生士はこのような言い方をするのでしょうか。歯周病専門医の若林健史歯科医師に聞きました。

【写真】歯周病専門医の若林健史歯科医師

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 今回のギモンについて、当院のベテラン歯科衛生士2人に聞いてみました。歯科衛生士は治療後の定期検診で、主に口の中のクリーニングや歯みがき指導を担当します。

 このとき、歯に汚れが残っている、つまり、歯をみがけていない患者さんに、そのことを伝えるために、よく使う言葉だと言っていました。私も患者さんに同じような言い方をすることがあります。

「(汚れていますが)歯をみがけなかったのですか?」

 と言わないのは、もうおわかりかと思いますが、患者さんを嫌な気持ちにさせたくないから。

 そんなことを言わずとも、患者さんのほとんどがすでに、「みがけていないな」という自覚があるからです。なのに、それを指摘されたら、気分がよくないでしょう。次の検診には足を運びにくくなってしまうかもしれません。

 歯科に定期的に通ってくれる患者さんの多くは、歯みがきの大切さもよくわかっています。しかし、私も含め、理想的な歯みがきを毎日続けることは難しい。

 仕事が忙しかったり、眠くて、歯みがきをしない日もあるでしょう。子育てなど家庭の事情で歯みがきどころではなかったり、みがきたくても、みがけない様々な理由を抱えています。

 また、風邪やコロナで寝込むなど、実際に、「何かがあった」人もいるわけです。

 だからこそ、歯科衛生士は「何かあったのですか?」と聞くのです。つまり、この言葉には患者さんに何か困りごとがあったのではないかと、心配する気持ちも込められています。

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若林健史

若林健史

若林健史(わかばやし・けんじ)。歯科医師。医療法人社団真健会(若林歯科医院、オーラルケアクリニック青山)理事長。1982年、日本大学松戸歯学部卒業。89年、東京都渋谷区代官山にて開業。2014年、代官山から恵比寿南に移転。日本大学客員教授、日本歯周病学会理事を務める。歯周病専門医・指導医として、歯科医師向けや一般市民向けの講演多数。テレビCMにも出演。AERAdot.の連載をまとめた著書『なぜ歯科の治療は1回では終わらないのか?聞くに聞けない歯医者のギモン40』が好評発売中。

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