日本では、14歳以下の子どものうち、年間2000~2500人が小児がんと診断されています。小児がんには、大人のがんとは異なる特徴があります。がんの治療が進歩し、多くの子どものがんが治る確率はとても高くなってきました。現在、約7~8割が治るようになっています。一方で、治療後数カ月から数年後に、治療による影響、合併症(晩期合併症)が起こる恐れがあります。身長が伸びない、骨が弱くなるなどのホルモン分泌異常、息切れ・せき・たんなどが起こる肺の障害などです。また、新たながんを発症することもあり、長期にわたって経過を観察して、異常があった場合に、すぐに対応できるようにする必要があります。さらに、治療中の学習、治療後の復学など成長過程にある子どもならではの課題を伴います。

 こうした小児がんの特徴に合わせて、専門的ながんの治療と療養の支援を提供する病院が、小児がん拠点病院(全国に15カ所、2022年10月1日現在)です。また、地域ごとに小児がん拠点病院が指定する「小児がん連携病院」があり、がんの種類や必要な支援に応じて治療を受けることができます。

 小児がん拠点病院には、「小児がん相談支援センター」があり、治療についてだけではなく、子どものライフステージに合わせた相談にも応じています。国立成育医療研究センターには、「小児がん医療相談ホットライン」も設けられています。これらの相談窓口は、病院にかかっていてもいなくても、だれでも無料で相談することができます。また、がん診療連携拠点病院等(全国に453カ所)にあるがん相談支援センターでも、大人のがんだけでなく、子どものがんについても相談することができます。

(文・山本七枝子)

【後編はこちら】>>がんの治療を自宅から遠い病院で受けるのは大変?その理由は?【今さら聞けないがんの疑問に答えます】

高山 智子(たかやま・ともこ)

国立がん研究センターがん対策研究所がん情報提供部部長。国内最大のがんの情報サイト「がん情報サービス」の運営や全国のがん相談支援センターの教育研修に携わる。専門は、がんコミュニケーション学。「科学的エビデンスの不明な医療への社会的対応についての学際的研究」「患者・市民と医療者・専門家の協働に向けたヘルスコミュニケーションのモデル構築」などの研究にも携わる。