面白い座り方で笑わせてくれることも
面白い座り方で笑わせてくれることも

 飼い主さんの目線でのストーリーを紡ぐ人気連載「猫をたずねて三千里」。毎回、心に響くストーリーをお届けしています。今回は、東京都在住の事務職、小松さん(48)のお話。15年前、保護したキジ猫「トラ」の飼育を両親に託し、トラは愛情を一心に受けて育ちます。しかし両親が80代になると相次いで倒れてしまい……。高齢で猫を飼うことについて、小松さんの思いを聞かせてもらいました。

【写真】同居する猫とツーショット

* * *

 僕とトラとのつき合いは古いんです。そもそもの出会いは15年前にさかのぼります。

 実家のそばの公園前でたまたま僕が見つけたのですが、生後2カ月くらいで小さかった。可愛かったし、道路を渡りそうで危ないし、放っておけなかったんです。

保護したばかりの赤ちゃん時代のトラ
保護したばかりの赤ちゃん時代のトラ

 それでひとまず友人に連絡してトラを預け、両親に「猫を飼わない?」と相談しました。

 両親は動物好きだったけど、自分たちの年齢などを考えたのか、「うーん」「どうかな」と足踏み。僕はトラを引き取りたいと思っていたので、あまり深く考えずに言ったんです。

「大丈夫、この先何かあっても、僕が責任を持つから」

 それならば、と父と母が首を縦に振り、トラとの生活がスタートしました。

■じいちゃん子になったトラ

 暮らし始めると、両親は困惑していたのがウソのように、トラに夢中になりました。

 うちの両親は自営業で、実家と工場が一緒になっていました。僕はサラリーマンをしていて、朝が早く帰宅が遅いこともあったので、食事やトイレのお世話はもっぱら両親がして、僕は病院に連れていったり、フードや砂の買い出しなどを手伝ったりしました。

 トラは、“じいちゃん、ばあちゃんに甘える孫”みたいに両親になつきました。とくに父と気が合うようで、添い寝したり、ブラシをしてもらったり、父がお風呂に入ると後を追い、湯船のふたに座って見守っていたんですよ。

うれしそうにトラに寄り添う父(じいちゃん)
うれしそうにトラに寄り添う父(じいちゃん)

 トラを実家に迎えてから5年後。父が少し体調を崩したことから工場を閉め、実家を売ることになりました。

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水野マルコ

水野マルコ

水野マルコ/1961年生まれ。ライター。猫と暮らして30年。今は優しいおばあちゃん猫と甘えん坊な男子猫と暮らしています。猫雑誌、一般誌、Web等での取材歴25年。猫と家族の絆を記すのが好き。猫と暮らせるグループホームを開くのが夢。

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