ソニー・ホンダモビリティの水野泰秀会長兼CEOと川西泉社長兼COO(撮影/米倉昭仁)
ソニー・ホンダモビリティの水野泰秀会長兼CEOと川西泉社長兼COO(撮影/米倉昭仁)

 10月13日、ソニーグループとホンダが設立した電気自動車(EV)の新会社「ソニー・ホンダモビリティ」の発表が都内で行われた。ホンダ出身の水野泰秀会長兼CEOとソニーグループ出身の川西泉社長兼COOが出席し、2025年にEVの先行受注を開始し、26年に北米と日本の市場に向けて出荷すると発表した。数ある自動車メーカーのなかでソニーがホンダとタッグを組んだことについて、水野氏は「予定外というより、想定通りの2社の関係だった」と語った。これに対して「そうなると思っていた」とうなずくのは、日本EVクラブ代表で自動車評論家・舘内端(たてうち・ただし)さんだ。

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「トヨタとくっついたら飲み込まれてしまう。日産はソニーと組めるような企業風土を持っていない」と館内さんは分析したうえで、ホンダの企業風土について、こう語った。

「ホンダは耕運機からビジネスジェット機まで幅広く作っている。『ASIMO』みたいな二足歩行のロボットも開発した。それはホンダというか、(創業者の)宗一郎さんのコンセプトだったんです。つまり、商品をバイクと自動車に限らないで、モビリティの枠を広げようとした。ソニーはそんなホンダの姿を見てきたから、組むならホンダだと、当然のように決まったんでしょうね」

 ホンダの創業者である故本田宗一郎氏は、1964年から自動車レースの最高峰F1レースにも挑戦した。それまでホンダといえば二輪車だったが、自動車メーカーとしてのホンダの名は一気に世界中に広まった。

 一方、本田氏と親交のあったソニーの創業者、井深大(いぶか・まさる)氏がトランジスタラジオで世界を席巻したのは有名な話だ。トリニトロンカラーテレビやウォークマンも井深氏がいなければ生まれなかっただろう。今回のEV事業参入への導線となった家庭用ビデオカメラ(後の「ハンディーカム」)の開発も井深氏が種をまいた。

ウリは高付加価値のEV

 2020年、ソニーは毎年1月に米ラスベガスで開催される世界最大規模の家電ショー「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」でプロトタイプEV「VISION-S」を披露し、ソニーブースは人だかりとなった。エンターテインメント性を追求した車内空間が演出され、ソニーが得意とするディスプレイが配置された。

 一方、車体づくりはオーストリアの自動車メーカーが製造を請け負った。

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