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「ごめんなさい」と、謝ってしまうほうが緊張が解けますし、「よし、あらためて!」と再び前に進むための仕切り直しとして有効です。聞いているほうも、「あ、今、笑っていいんだ」とホッとします。ちょっとした笑いが起きれば自分の心もほぐれますしね。

 このように軽くユーモアをまじえた「困ったときはとりあえずこのフレーズ」を覚えておくと、何かと助けられます。もちろん、「ごめんなさい、緊張で頭が真っ白になってしまいまして……」だけでも十分です。冷や汗をかきながらも誠実にお詫びの気持ちを伝える姿には、人間味を感じるもの。「ピンチはチャンス」とはよく言ったものです。

 大切なのは、「絶対失敗しないように」とガチガチに張り詰めるのではなく、「もし失敗しても、こう対応すればいいから大丈夫」としっかり想定して柔軟に構えておくこと。

 例えば、事前の下読み段階で、発音が難しい長い言葉があるとします。「もし、言い間違えてしまったらどうしよう?」とただ不安に思うのではなく、失敗したときのプランを考えておきましょう。「そんなときはすぐ『失礼しました! もう一度よろしいでしょうか?』と謝ってから、ゆっくりしっかりと発音しよう」、などフレーズと対応を準備しておくのです。

「『どうしよう……』ではなく、『こうしよう!』」と、覚えておいてください。

 重ね重ねになりますが、ミスをしないに越したことはありません。しかし、人間は機械ではないのですから、たまにずっこけたりもします。

 何よりここで相手が聞いているのは、ミスしたあとの姿勢です。突発的な事態にこそ、人間性が出てしまうもの。そこで保身コメントを口にすると、結局そのミス以上に大きなものを失ってしまいます。

「しまった!」と動悸が激しくなろうとも、指先がスーッと冷たくなろうとも、そんなときこそ大急ぎで自意識から外れて、まずはそれを認める素直さを。そして「ごめんなさい」と訂正を。

 自分のフォローをしたくなっても、それは今、相手が求めていることではありませんしね。

【ここまで聴いてくれたあなたへ】
ミスをしてしまったら、自分の守りに入らず、チャンスに転換。

(構成/小川由希子)

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秀島史香

秀島史香

秀島史香(ひでしま・ふみか)ラジオDJ、ナレーター。1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。映画、テレビ、CM、美術館音声ガイドなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』などに出演中。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』『なぜか聴きたくなる人の話し方』(共に朝日新聞出版)。ハスキーで都会的な声質、あたたかい人柄とフリートークが、クリエイターからリスナーまで幅広く人気。

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