翌16年にも、履正社の最速146キロ左腕・山口裕次郎がドラフト前に調査書の提出を求めた各球団に対し、「4位以下の指名だったら社会人(JR東日本)に進むので、指名を遠慮してほしい」と伝えたが、日本ハムが6位で強行指名したことから、話がこじれてしまう。

 山口はドラフト前夜に複数の球団が4位以下での指名が可能かどうか再確認してきた際にも、あくまで「3位以内」の希望を貫いており、「筋を通して指名を回避した球団への信用問題にもなる」という理由から、入団を拒否した。

 同じ16年のドラフトでは、最速155キロ右腕・生田目翼(流通経済大)も、「2位以上でなければ、プロには行かない」と“2位縛り”の条件をつけたが、指名漏れに終わった。

 肘、肩と故障が相次ぎ、プロですぐ活躍できる自信が持てなかったのが理由だったが、結果的に故障歴のある投手を即戦力と見込んで2位以内で獲得する球団は現れなかった。

 その後、日本通運で腕を磨いた生田目は、18年のドラフトでは「何位でもプロに行く」と表明し、日本ハムに3位指名された。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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