そこで、「患者力」を高めるために大切と考えられる二つの力、「伝える力」と「聴く(訊く)力」について解説します。

■患者力(1)伝える力 「結論→理由→具体例」の順で話す

 日本にはもともと、「以心伝心」「言わずとも察する」「空気を読む」など、相手への気配りを美徳とする風土があります。しかし、命や健康というかけがえのないものを最優先させるべき医療の場では、短い診察時間で自分の気持ちを相手にわかりやすく伝え、理解してもらうことを第一に考える必要があります。診察室では「美しい気配り」は不要であり、はっきりと「結論→理由→具体例(病状・病歴など)→もう一度結論」という伝え方をすることが必要なのです。

 例えば、「薬が合っていないのではないか。それなら薬を変えてほしい」と思っている場合、このように伝えてみましょう。

「先生、今飲んでいる薬が合っていないのではないかと思うんです(結論)。なぜかというと、いつも通り薬を飲んでいるのですが、3日ほど前から朝、体がだるくなったり、頭が重くなったりします(理由)。前にも別の病院で処方してもらった薬を飲んでいたら、途中で調子が悪くなったことがありました(例・病歴)。いつも通りの生活をしているのに何かおかしいということは、やっぱり薬のせいじゃないでしょうか(もう一度結論)」

 体調不良は薬のせいではないかもしれません。しかし、患者は医療の専門家ではなく、どうして体調が悪くなるのかわからないために診察を受けています。だからこそ、感じたことを率直に伝えることが大切なのです。

■患者力(2)聴く・訊く力 聞いたことを理解したか確認→わからなければ質問

 言いたいことを伝えることができたら、次は医師の話を聞くことが大切です。コミュニケーションは、お互いの考えを言葉にのせて交換することですから、「言ったら聞く」「聞いたら言う」という「やりとり」を繰り返すことで初めて、患者と医師の間で理解や認識を共有できるようになります。ただ、聞くときにも工夫が必要です。医師の言うことに、ただうなずくだけ、あるいは「はい。わかりました」と答えるだけでは、医師は患者がどこまで理解できているか把握できません。

次のページ
身につけたいスキルのひとつが「パラフレーズ」