医師とのやりとりで大切なのは、単に音を耳に入れる「聞く」ではなく、集中して話を理解しようとする、「聴く」力です。この力を高めるために、身につけたいスキルのひとつが「パラフレーズ」という行動。これは、相手から聞いた話の内容を自分のなかに落とし込み、自分の言葉に置き換えて相手に伝えること。できるようになるためには練習が必要な、やや難しい行動ですが、医師が言ったことをオウム返しに言うのではなく、自分の言葉として伝えることが大切です。

 例えば、医師が話した内容を、「では、やっぱり今の薬が副作用を起こしている可能性があるのですね。新しい薬は副作用が起こりにくいけれど、実際に飲んでみないとわからないということですね」と患者がパラフレーズすることで、医師は「患者が自分の話をどのぐらい理解できたか」を確認することができます。同時に、患者として「医師の話を理解するため積極的な気持ちで聴いている」という姿勢を医師に示すことができます。それにより医師も、より詳しく説明しようという気持ちになり、結果的に患者と医師の相互理解を深めることにつながります。

 そしてもうひとつ、診察の最後に発揮したいのが、「訊く」力です。この「訊く」は「質問すること」を意味します。診察室を出る前に、「もう聞きたいことはないか」「帰宅後に聞き忘れたことを後悔しないか」と、もう一度自問自答し、思い当たることがあればドアを開ける前に訊きましょう。

 このように、伝える力や聴く(訊く)力をつけることで、医師と十分にコミュニケーションを図ることができれば、短い時間であっても不安や後悔を残すことなく診察を受けられるようになるはずです。

(文/出村真理子)