6回途中から登板した日大鶴ケ丘の右腕・勝又温史(現DeNA)を目当てにネット裏で観戦していたプロ7球団のスカウトたちも「こんな試合は見たことがない」と驚き呆れるばかりだった。

 これほどまでに多くの四球が記録されたのは、球審が高さ、コースとも厳格に判定した結果、ストライクゾーンが狭くなっていたからだ。

 丹念にコースを突いても、ほとんどが「ボール!」と判定され、「あれがボール?」とガックリする投手もいた。試合中、外部から審判への助言が原則禁止されているため、「もっとお手柔らかに」と注意できなかったことも、厳格な判定に拍車をかけた。生真面目さも度を超すと、考えものだ。

 かくして、最高気温34.9度を記録した炎天下で4時間4分も要した大乱戦は、8回に3点差を追いついた日大鶴ケ丘が9回に4点を勝ち越し、19対15で勝利。萩生田博美監督は「(四死球)30個弱は経験しましたけど、ここまではないですね。(厳しい)条件の中で仕方がないです。粘ってよく踏ん張った」と困難を乗り越えた選手たちを労っていた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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