■甘露寺蜜璃は“頼れるお姉さん”

 炭治郎がここまで素直に蜜璃に頼ることができたのは、単に蜜璃の戦闘力が高いからだけではない。彼女の優しい「姉」のような態度が、肉親に近いほどの安心感を炭治郎に与えたようだ。

 蜜璃は炭治郎の危機の時に、軽々と彼を背負って救出しており、その姿はまるで弟の世話をやく姉のようだ。そして、小さな弟に声をかけるように「頑張ったね えらいぞ!」と言っている。彼女は敵である鬼が少年姿だったことから、「ちょっと君! おイタが過ぎるわよ!」と注意しており、この様子からも蜜璃がいかに性格に裏表がなく、本当の「お姉さん気質」であるのかがよくわかる。

 また、蜜璃は鬼化している禰豆子を上手にあやし、抱きしめ、頭をなでてやっている。「甘露寺蜜璃は竈門兄妹を応援してるよ~」という言葉も温かかった。どんな時でも、蜜璃は穏やかで優しい「お姉さん」なのだ。

■本当は「妹気質」の胡蝶しのぶ

 では、蜜璃と同じく「年上の女性」で、柱である胡蝶しのぶに対する炭治郎の態度はどうだっただろうか。蜜璃としのぶは、もともと良家の子女であるなど、共通する要素が多く、しかし同時に、対照的なキャラクターでもある。

 彼女たちは「肉体に対するコンプレックス」が真逆だ。しのぶはさまざまな資質に恵まれてはいたが、鬼狩りの剣士としては明らかにパワーが不足していた。蜜璃はといえば、人間離れした筋力を不気味がられ疎まれてきた過去があった。

 しかし、彼女たちはコンプレックスを克服し、先輩剣士として「姉のように」炭治郎に優しく接した。ただ、炭治郎の方は蜜璃には無邪気に振る舞う一方で、しのぶに対しては時々心配そうな表情を浮かべている。

 たくさんの弟妹がおり、自然と「長女らしい」行動が身に付いている蜜璃に対して、しのぶはもともと2人姉妹の末っ子だ。しのぶは「妹気質」な性格だったが、姉の死後、胡蝶家の当主として、親のいない鬼殺隊の子どもたちを養育するため「長姉のように」振る舞うようになっていた。炭治郎は自分が「長男気質」なこともあって、笑顔の下にしのぶが隠している、彼女の苦悩を気にかけていたのだった。柱には長男キャラクターはたくさんいるが、長女の属性は蜜璃の特徴だといえよう。

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蜜璃は「死の闇」を寄せ付けない