恋柱・甘露寺蜜璃(画像はアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編公式HPより)
恋柱・甘露寺蜜璃(画像はアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編公式HPより)

【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

【写真】若い頃、蜜璃の「師匠」だった柱はこの人

鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎は、世話好きで頼りがいのある「長男気質」の性格だ。妹・禰豆子を守るため、「長男だから」と自分を鼓舞しながら、鬼との死闘の日々を送っていた。しかし、この炭治郎が、刀鍛冶の里では甘露寺蜜璃に対してだけ、いつもの「兄らしい」様子とは少し違う表情を見せている。いったいなぜか。ここでは「きょうだいの属性」という視点から、蜜璃の「長女気質」に注目し、蜜璃と炭治郎の関係について考察する。

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■意外に「頑固」な炭治郎

 炭治郎は朗らかで優しい性格だが、自分がこうだと決めると頑固になってしまうことがある。助けにきてくれた水柱・冨岡義勇に従わないシーンや、風柱・不死川実弥に「頭突きさせてもらいたいです 絶対に」と叫ぶ場面があったりと、“頑固者”のエピソードには事欠かない。

 しかし、恋柱・甘露寺蜜璃への炭治郎の態度は、最初から一貫して“素直”であった。義勇に対してだけでなく、煉獄杏寿郎宇髄天元にですら、時々「言うことをきかない」炭治郎が、なぜ蜜璃の言葉には“従順”だったのだろうか。

■柱に「任せられない」炭治郎

 刀鍛冶の里の戦いまでを振り返ると、炭治郎は戦闘を柱に任せきってしまうことに、ためらう様子を見せることがあった。「待機命令」を煉獄から告げられた時も、「後は俺ひとりで動く」と宇髄から戦線離脱を命じられた時にも、単純にそれに従うわけではなかった。

 しかし、刀鍛冶の里では「こっちは私が何とかするから」という蜜璃の言葉に対して、炭治郎は驚くほど素直に従っている。その時、蜜璃が引き受けたのは、霞柱・時透無一郎をふっ飛ばし、炭治郎、禰豆子、玄弥が束になってかかっても苦戦した、ある鬼の分身だった。相当の信頼がなければ、これほど強い鬼の相手を蜜璃1人に任せるはずはない。

「仲間は絶対 死なせないから」(甘露寺蜜璃/14巻・第123話「甘露寺蜜璃の走馬灯」)

 恋柱の名に恥じない、情熱的な強さを見せる蜜璃に、炭治郎は信頼を寄せて、その場を任せた。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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