楽天から巨人に移籍後に欠かせない存在となった高梨雄平
楽天から巨人に移籍後に欠かせない存在となった高梨雄平

 トレードが可能な期間の終了まであと1カ月を切った今年のプロ野球。ここまでは動きがないが、優勝争い、CS進出争いに向けて、密かに補強を検討している球団も少なくないはずだ。そこで今回は2019年以降に成立した交換トレード、金銭トレードで見事に成功した例はどんなケースがあったのか、改めて振り返ってみたいと思う。またFAでの人的補償による移籍は今回対象外とした(今シーズンの成績は7月3日終了時点)。

【写真】移籍して2年目、圧倒的な存在感をみせている選手がこちら

 まず金銭トレードで最も成功したのは涌井秀章(ロッテ楽天)になるだろう。2019年は6年ぶりに規定投球回数を下回るなど苦しいシーズンとなったが、オフに楽天に移籍すると開幕から8連勝をマークするなど見事に復活。コロナ禍での短縮シーズンながら、最後までローテーションを守り抜くと、11勝で最多勝のタイトルを獲得したのだ。ちなみに涌井は西武で2度、ロッテでも1度最多勝に輝いており、3球団での獲得はNPB史上初の快挙である。移籍2年目の昨年はシーズン終盤に調子を落として中継ぎでの起用となるなど成績を落としたものの、それでも6勝をマーク。今年は5月に打球を右手に受けて骨折するアクシデントで戦列を離れているが、それまでは3勝1敗、防御率2.88と安定したピッチングを披露している。今年で36歳となるがその力は健在で、怪我からしっかり回復すればまだまだ先発投手陣の一角として期待できるだろう。

 もう1人金銭トレードで大きな戦力となっているのが同じく楽天の炭谷銀仁朗(巨人から移籍)である。2018年オフにFAで巨人に移籍しながらも、大城卓三や岸田行倫の成長もあって、昨年の7月に楽天へとトレードとなった。移籍直後から一軍に合流すると、太田光に次ぐ51試合に出場し、チームのCS進出にも貢献。今年はここまで捕手としてチームトップの出場数を記録している。今年で35歳となるが、その安定したスローイングはまだまだ健在で、パ・リーグでもトップの盗塁阻止率(.467)もマーク。両リーグでプレーしてきた豊富な経験も強みだ。涌井、炭谷とも前の所属チームでは若返りを図るうえで微妙な立ち位置となっていたが、そんな2人を上手く再生させたというのは楽天にとって大きなプラスであることは間違いないだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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巨人はトレードでは“勝ち組”?