移植先が未定の18本のイチョウ
移植先が未定の18本のイチョウ

「樹齢100年の樹木は高さ約20メートルあります。これを移植するためにはまず、枝を切り落として、電信柱のような格好にしないと、トラックに載せて運べません。さらに、新しく移植される場所は、これまでに根を張っていた場所の土とは違う土壌になります。移植しても、その後の樹木の美しさと活力を維持するのは極めて困難なのです」(同)

 それにもかかわらず、今回の計画では、秩父宮ラグビー場と神宮球場の場所を入れ替える形で新設するという。さらに、聖徳記念絵画館の前にある軟式野球場の位置には会員制のテニスコートを建設し、敷地内に超高層ビルが2棟建てられる予定だ。

 そして、最も問題視されているのは、神宮外苑のシンボルである4列のイチョウ並木の保全だ。まず、秩父宮ラグビー場(旧女子学習院正門)に続く横道の2列18本のイチョウ並木の場所には野球場が新設されるため、移植などが検討されている。聖徳記念絵画館へ続く4列のイチョウ並木は残るが、野球場のバックスタンドが隣接する形になるため、地下水や日光が十分に届くのかが懸念されている。

「野球場の新設で、地下約40メートル付近で基礎工事が行われる予定ですが、それによって地下水が遮断される懸念があります。水はイチョウにとって命です。少なくとも、4列のうち、野球場が建つ側の1列は、将来的に維持できなくなる可能性があります」(石川機構教授)

 日本イコモス国内委員会は、樹木伐採を約1000本から2本で済む代替案を東京都に提案している。

「野球場とラグビー場は、現地再建をすれば2本の伐採で済みます。なぜ、あえて場所を入れ替えるのか。ラグビーの試合は、現在でも国立競技場で開催されています。国際的なスポーツクラスターを造って地域を活性化させる目的は、既に達成されており、東京五輪が終わった今では、環境を重視し、真の文化的なスポーツクラスターへと磨きをかけていくことが重要であると思います」(同)

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