眼瞼下垂データ
眼瞼下垂データ

 では、どのように治療するのだろうか。

「上眼瞼挙筋自体には問題がない場合も多いため、筋のリハビリなどでは眼瞼下垂の改善は見込めません。緩んだ挙筋腱膜やミューラー筋を瞼板に固定し直す手術が必要となります」(松田医師)

 治療法は、先天性と加齢性、個々の病態によっても変わる。愛知医科大学病院眼形成・眼窩・涙道外科の柿崎裕彦医師はこう話す。

「加齢性による眼瞼下垂の場合、軽症から重症までの幅広い病態で最もよくおこなわれる手術が『挙筋腱膜前転法』です。緩んだ挙筋腱膜やミューラー筋を同時に、または別々にはがして、前転(前方移動させること)させ、まぶたの縁にある瞼板に糸で縫合して固定します。これにより再び、まぶたをもち上げる力を取り戻すことができます」

「挙筋腱膜前転法」も、術者や医療機関によってアプローチ法が異なる。大きく分けて、まぶたの皮膚を切っておこなう前方アプローチ(経皮膚法)とまぶたを裏返して結膜を切っておこなう後方アプローチ(経結膜法)がある。経結膜法は皮膚を切らないため、皮膚に傷痕が残らず、術後の腫れも少ないなどのメリットはあるが、経皮膚法に比べて難易度が高く、実施できる医療機関も少ない。また、皮膚を切除しないため、皮膚のたるみが強い場合には向かないことがある。

 先天性の場合やまぶたの筋肉に原因がある眼瞼下垂の治療は、「つり上げ術」が一般的だ。まぶたと眉の上部の間にトンネルを作り、そこに人工素材や筋膜などのつり上げ材を通してつり上げる。

■小切開法なら傷も腫れも最小限

 経皮膚法で近年、注目されているのは「小切開法」だ。技術的には難易度の高い方法だが、術後のまぶたの変形リスク、傷痕や腫れも最小限に抑えられるという。

「皮膚を切開する範囲が広いと、術後瘢痕のために眼球が圧迫され、しばらくの間、見えにくくなりやすい。通常ならば20~25ミリ程度の切開範囲を5~6ミリで対処する小切開法では、そうしたまぶたの変化は起こりにくい」(柿崎医師)

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全身症状も改善することが多い