※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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歩くのが遅く、横断歩道を青信号の間に渡り切れない。ペットボトルのふたを開けるのが大変……。筋肉量が減ってこのような状態になるのが「サルコペニア(筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態)」だ。転倒や寝たきりの原因になるとされている。人工透析を受けている患者はそうでない人に比べ、サルコペニアの合併率が高率であることがわかった。サルコペニアでからだが動かなくなると透析を受けに行くことが難しくなる。サルコペニアを合併した透析患者は、死亡リスクが3倍になるという報告もあり、専門医たちはサルコペニアの予防策に力を入れ始めている。

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 東京都渋谷区の日本赤十字社医療センターに、ある日、都内の透析クリニックから高齢患者が救急車で運ばれてきた。その患者は血液透析を受けている最中に、体調不良となった。血液透析をおこなうクリニックでは、患者の自宅とクリニックをバスで送迎するケースが多い。この患者もそうだったが、このような事態のために、帰れなくなった。もともとからだが弱ってきていて足腰が動かなくなっていた。たとえ無理をして帰ることができても、次の透析日に来院が難しいとクリニックの主治医が判断。病気の治療をしてもらい、「入院での透析ができるように」という理由から、その対応が可能な日本赤十字社医療センターに運ばれてきたのだった。

 人工透析は腎臓の機能が著しく低下したときに、その代わりとなる腎代替療法の一つだ。糖尿病や高血圧が引き金となって起こる慢性腎臓病(CKD)の増加や社会の高齢化により、人工透析患者は年々増加し、総数は30万人を超えている。

 人工透析のうち血液透析は週に3回、病院やクリニックに通い、4時間かけて血液をからだの外に出し、人工腎臓(透析器=ダイヤライザー)を通じてからだの毒素や余分な水分を取り除いた後に再び体内に戻す治療だ。

 透析ができなくなると老廃物や水分がからだにたまり、命が危険にさらされる。雨の日も風の日も、「透析を休めない」と言われるのはこのためだ。

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近年は透析患者が高齢化し、通院できなくなる傾向