翌日、新聞各紙は土井の足が本塁ベースを踏んでいる写真をこぞって掲載し、晴れて岡田球審の名誉が回復された。

 一夜明け後、岡田球審は「やはり私の判定は間違っていなかった。夜、新聞社の人から『セーフのようだ』と写真の結果を知らされたが、やはり昨夜は寝られませんでした」と述懐している。

 この話は、後にアニメ化されている。「巨人の星」第148話「グラウンドの孤独者」(1971年1月23日放映)の中で、日米野球の話に設定を変えて紹介されたのだが、当時小学生だった筆者も見ていた。以来、岡田氏は、子供心にも最も身近な存在の審判として記憶されたのは言うまでもない。

 これほどまでにドラマチックな審判の判定をめぐる物語は、はたして、これからも生まれるだろうか?(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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