※画像はイメージです。本文とは関係ありません(Gettyimages)
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 上からみていくと、まず売上高が前期から7.2%増えたのと同時に、売上総利益も7.9%増加。そのため粗利率は、前期からほぼ変わっていません。つまり商品の競争力や付加価値が落ちたわけではなさそうです。

では、[ギモン1]なぜ営業利益は減ったのか。

 その答えは、売上総利益と営業利益の「間」にあります。販売費及び一般管理費(販管費)の増減率をみると、前期から19.6%の大幅アップ。理由を探るため、販管費の内訳を調べると、研究開発費が310億円(45.2%)も増えていることがわかりました。

 実は朝夕電機は、ここ数年、家電製品の売上が伸び悩む一方で、半導体事業の売上が2ケタ増加を続けています。そこでより高性能の製品を開発するため、当期は半導体事業に500億円もの研究開発費を投じたのです(こうした詳しい情報は、実際には有価証券報告書や投資家向け説明資料に記載されています)。

 では、[ギモン2]営業利益が減少したのに、なぜ当期純利益は伸びたのでしょうか。

 再び増減率に目を向けると、特別利益が前期から31倍も増えています。内訳をみると、前期にはなかった「関係会社株式売却益」が198億円も計上されていることがわかりました。

 朝夕電機は、半導体を強化する一方で、年々コストが膨らみ利益率が低下しているモバイル事業を2020年6月に1200億円で売却。その売却益の一部(*)が特別利益の項目に計上され、当期純利益を押し上げていたのです。

 得意分野(半導体)を伸ばし、苦手分野(モバイル)をなくすのは、体に例えると、より速く走るために肉体改造をしてフォームを改良するようなもの。今はその過渡期なのです。

*子会社を売却した場合、売却額から子会社の簿価を差し引いた「差額」が、利益(株式売却益)と認識されて損益計算書に計上される。朝夕電機の場合、簿価1000億円のモバイル事業を1200億円で売却したため、差額の200億円(売却手数料除く)が、関係会社株式売却益として計上された

(佐伯良隆)