5月に入り、企業が次々と3月期の「決算短信」を公表しています。決算の要点をまとめたもので、経営状態が気になる投資家たちは真っ先に目を通します。しかし、その情報はどのようにすれば手に入るのでしょうか? そして、どこをどう読めば、何がわかるのでしょうか?『100分でわかる! 決算書「分析」超入門2022』より、一部を抜粋して紹介します。

※文中に出てくる【表2】はこちらで見られます

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 決算情報を得る方法は「決算短信」と「有価証券報告書」の2通りがあり、上場している会社なら、どちらもネットで簡単に見られます。まずは決算短信で会社の大まかな経営状況をつかむのが、決算書を読み解くコツです。

◎決算短信(単に「短信」とも)
 そのものズバリ決算の要点を短くまとめたもの。年1回の本決算時だけでなく、四半期(3カ月)ごとに公開されるため、会社の経営状態をタイムリーに知れるのがメリット。また冒頭に重要な数字がまとめられているので、わかりやすいのが特徴です。各社のウェブサイトにある「投資家向け(IR)情報」のページから閲覧できるほか、各証券取引所が提供している「適時開示情報閲覧サービス(TDnet)」からも見ることができます。

 決算短信は会社の決算がいち早く公開されるもので、投資家は真っ先に目を通します。皆さんも、はじめに決算短信の「サマリー(概要)」欄に目を通すことをお勧めします。

■決算短信のサマリーを読む

【表1】架空の企業である「朝夕電機」のサマリー。同社は1970年創業。国内外に14のグループ企業を有する大手電機メーカー。年間売上規模は1兆円強で、業界順位は第11位。一般家庭向けの電化製品の開発・販売のほか、企業向けにIT事業、半導体事業などを行う。業界では比較的新興の企業だが、デザイン性・機能性に優れた家電を販売して成長。ここ数年は家電の売上が頭打ちになりつつあるが、一方で半導体事業に力を注いでいる。
【表1】架空の企業である「朝夕電機」のサマリー。同社は1970年創業。国内外に14のグループ企業を有する大手電機メーカー。年間売上規模は1兆円強で、業界順位は第11位。一般家庭向けの電化製品の開発・販売のほか、企業向けにIT事業、半導体事業などを行う。業界では比較的新興の企業だが、デザイン性・機能性に優れた家電を販売して成長。ここ数年は家電の売上が頭打ちになりつつあるが、一方で半導体事業に力を注いでいる。

 表1は、架空の企業である「朝夕電機」のサマリーです。実際の決算短信でも、最初にこのようなサマリーがあり、その年の経営成績、財政状態、キャッシュ・フローなどの要点が1ページでまとめられています。

 では、このサマリーから、試しに朝夕電機の業績を分析してみましょう。

 まずは(1)連結経営成績の欄をみると、当期は売上高が7.2%アップした一方で、営業利益は11.9%ダウン。そのため営業利益率は、前期から1.9ポイント下がっています。収益性が落ちているように感じられます。

 続いて(2)連結財政状態をみると、総資産が前期から4654億円(24.5%)も増える一方、自己資本比率は6.1ポイント低下。つまり負債(他人資本)が大きく増えたことがわかります。

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最後は(3)連結キャッシュ・フローの状況