「辺野古 陸自も常駐」「海兵隊と極秘合意」「日米一体化 中核拠点に」

 沖縄タイムスには石井と私、両方の記事が載る。ほとんど眠れないまま自宅アパートで手にした琉球新報も、石井の記事が1面トップを飾っている。石井からは河北新報、信濃毎日新聞、新潟日報、高知新聞なども1面トップだと連絡が入った。共同は英語、中国語でも配信し、ロシア、パキスタン、中国のメディアに転電された。私1人では到底解明できなかった事実が、到底届かない読者にまで伝わった。石井の力が借りられて良かった、と心から思った。

 報道はこんな内容だ。陸自トップの陸上幕僚長・岩田清文と在日米海兵隊司令官ニコルソンが2015年、陸自の離島専門部隊である水陸機動団の連隊一つを辺野古新基地に常駐させることで極秘合意していた。「日本版海兵隊」と呼ばれる水陸機動団は「本家」海兵隊の指導を受けながら、V字型滑走路や新設される岸壁を使って共通装備のオスプレイや水陸両用車の訓練ができる。海兵隊にとっても、陸自と一体化を進め、実質的に配下に組み込むメリットがある。辺野古は両組織の中核拠点となる。そして複数の陸自幹部が海兵隊撤退を見据え、「将来、辺野古は実質的に陸自の基地になる」と語っている――。

 国会で問題になった。防衛相・岸信夫は日米の正式合意ではないと強調したが、事実に沿って現場トップ同士の合意までは否定しなかった。ところが、新基地建設に血道を上げてきた首相・菅義偉は、完全否定に走った。「従来より代替施設における恒常的な共同使用は考えていなかった。その考えにこれからも変更はない」と答弁した。

 明らかな虚偽を含んでいる。民主党政権は公に新基地の日米共同使用を打ち出し、米政府と協議していた。報道もされている。菅はこれ以上、新基地建設への批判材料を増やしたくなかったのだろう。私たちにとっては、思わぬ形で首相の全面否定という言質が転がり込むことになった。今後、縛りになる。

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石井はまた1人、貴重な情報源を失った