写真はイメージです(GettyImages)
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、日常で起こる性差別について。

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 新年度、新しい生活をスタートさせている人も少なくないでしょう。今日は、そんな新しい職場、新しい学校、新しい日常をスタートさせている女性たちに向けて、「性差別」の現実をご紹介します。

「私は性差別にあったことがない」と言い切る若い女性は昔からずっと一定数いるのですが、たいていの場合、それは勘違いだったりします。性差別は昔の話でもなければ、あからさまな性差別主義者による特別な事件というわけでもありません。たいていの性差別は、不意打ちです。まさか、この状況で、この人から? みたいなことが日常的に起きます。あまりにも不意打ちなので、こちらも準備がなく、「私の考えすぎかな?」「何か気に障ることしちゃったかな?」とついつい自分に問題があるかのように考えてしまいますが、こうやって時間を奪われるのも性差別の害の一つです。

 しかも、たいていの性差別は相手が自覚すらしていません。むしろ「コミュニケーション」「ディスカッション」「教育」くらいに思っていたりします。そのため「それはセクハラです」などと抗議しようものなら、100%に近い確率で「はぁ?」と驚かれ、「これくらいのこと笑ってやりすごせないと社会人としてやってけないよ」と説教されたり、「僕の気持ちが分かってもらえない」などと被害者ポジションを取ってきたりします。あまりにも堂々と開き直るので、「やっぱり私の勘違いかな」と萎縮してしまうこともあるでしょう。

 残念ながら、性差別は日本の日常です。ジェンダーギャップ指数120位(2021年)の国のリアリティーです。国連から注意されている性差別的な法律は山ほどありますが(メジャーなところでいえば、夫婦強制同姓です)、本気で正そうとしてくれる政治家はあまりいません。というより、日本の法律では、「性差別」が何なのか定義すらされていないのです。もちろん、定義されていないから「性差別はない」ということでもなく、具体的な被害件数がないから「被害はない」ということではありません。性差別が日常的にありすぎるから、「性差別」を「性差別」と認識することすら難しくなっているのが現実です。でも、そういう日常の性差別って、女性の希望をゆっくり奪い続けていきますよね。だから、女性たちは手をつないで、「性差別やめろ」って怒らなくちゃだめなんです。自由に楽しく気持ちよく笑って生きるために。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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実際にあった不意打ちの性差別