大学側も「カルト宗教」の勧誘には警戒を強める。写真は公式YouTubeにカルト対策の動画をアップしている大阪大学の豊中キャンパス(PIXTA)
大学側も「カルト宗教」の勧誘には警戒を強める。写真は公式YouTubeにカルト対策の動画をアップしている大阪大学の豊中キャンパス(PIXTA)

 4月は大学の入学シーズン。以前より対面での交流がしやすくなり、新たな出会いを楽しみにキャンパスに向かう新入生も多いだろう。ただ、大学側がこの時期、強く注意喚起しているのがカルト宗教やマルチ商法の勧誘被害だ。初対面で正体を見抜くのは難しく、「今年は新入生だけではなく、リアルの交流がやっと始まる上級生も標的にされかねない」(専門家)。大学生が狙われるその手口や特徴の一端を見てみよう。

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「カルト宗教の勧誘は、初対面ではその正体を見抜くことはできません。逆にとても魅力的な人たちや集まりに見えるということを、必ず知っておいてください」

 そう強く呼びかけるのは、カルト宗教からの脱会相談を長年受けている全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士だ。

 渡辺弁護士によると、コロナ禍で大学のキャンパスで学生が減る中、カルト宗教はSNSを通じて学生たちに接触する活動を強化した。

 例えばツイッターで「#春から〇〇大」という新入生らしきハッシュタグを見つけると、信者の現役大学生やOBらが、接触を試みる。「いきなり宗教に勧誘するのではなく、正体を徹底して隠しフレンドリーなコメントで近づいていくのです」(渡辺弁護士)

 この春はSNSに加え、キャンパスでの勧誘が再び活発化すると渡辺弁護士は見ている。毎年、ターゲットになるのは主に新入学生だが、今春は、コロナ禍でキャンパスライフが送れず、リアルの大学生活がやっと始まる新入生気分の2、3年生もいるからだ。

 渡辺弁護士は、「重ねて強調しますが、初対面で正体を見抜くことはできません」と前置きした上で、知っておいた方がいい勧誘の手口や団体の特徴を挙げる。

▽キャンパス内に一人でいる学生を狙うことが圧倒的に多い。その場所や人目があるかないかは問わない。

▽信者らは一人だったり複数だったりさまざま。複数でも最初から一緒にいるとは限らない。警戒されないよう、信者同士が「久しぶり!」とターゲットに定めた学生のそばで偶然出会ったように装い、その流れで声をかけてくるなど手が込んでいる。

▽フットサルやバレーボールなどのスポーツ。最近注目されているSDGsやボランティア活動。ゴスペルなどのサークルに偽装している。さらに、実際にスポーツの大会に出場したり、ボランティア活動の実績を作るなど、気づかれないための正体隠しが徹底している。

▽やたら好感度の高い男性、女性が多く「いい人」だと感じてしまう。

▽集まりに参加すると、社会人が登場する。学生の目には魅力的な仕事や立場に映る「すごい人」たちが多い。

▽団体の責任者、イベントの主催者があいまい

 などである。あくまで目立つ例で、これらに該当しなければ安心ということではない。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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