サトノダイヤモンドより3歳年下のサトノジェネシスは、兄の活躍もあって2016年のセレクトセール当歳では2億8000万円の高値で落札。途中に2年半もの長期休養があったことも響いて重賞未出走での引退と額面に見合った活躍はできなかったが、通算4戦3勝のレースで見せた走りから潜在能力や血統面を買われて種牡馬入りし、今年から供用を開始することになった。

 まだ兄のサトノダイヤモンドも初年度産駒は走っていない(今年デビュー)。にもかかわらずその弟が種牡馬入りした背景には、サトノダイヤモンド産駒の評判が高いことや、同じく「未完の大器」タイプだったシルバーステートが上々の種牡馬デビューを飾ったことなどがあるのかもしれない。

 そのシルバーステートも現役時代は重賞を走ることもなく5戦4勝で引退した。だがその勝ちっぷりが圧倒的だったことや、半兄に豪G1馬セヴィルがいることもあって種牡馬入り。当初から馬産地の評価は高く100頭以上の繁殖牝馬が集まり、初年度産駒からファンタジーステークスを制したウォーターナビレラを出した。

 なおシルバーステートの全弟ヘンリーバローズも2戦1勝で引退となったが、デビュー戦で後のダービー馬ワグネリアンの2着だったことや兄の種牡馬としての人気ぶりなどから、こちらも種牡馬入りを果たしている。

 海外でも偉大な兄弟の代役を期待されて種牡馬入りし、大成功したケースは多い。20世紀後半の欧州で名種牡馬として歴史に名を刻んだサドラーズウェルズの全弟フェアリーキングはデビュー戦で故障し、1戦未勝利で現役を引退を余儀なくされた。

 しかし母の半弟に大種牡馬ヌレイエフなどがいる良血牝系の出身であること、兄のサドラーズウェルズが愛2000ギニーを勝つなどの活躍を見せていたことから種牡馬入りし、産駒からは凱旋門賞馬エリシオや英ダービー馬オース、日本で高松宮記念を制したシンコウキング、ジャパンカップや香港カップなどを勝ったファルブラヴなど活躍馬が多数出現した。種牡馬としても偉大だった兄にはさすがに及ばなかったものの、代替の域に収まらない成功ぶりだった。

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運命のいたずらでG1馬の母となった繁殖牝馬は?