ディープインパクトの全兄ブラックタイドは産駒からG1を7勝したキタサンブラックが出現(※画像はキタサンブラック)
ディープインパクトの全兄ブラックタイドは産駒からG1を7勝したキタサンブラックが出現(※画像はキタサンブラック)

 競走馬にとって大きな目標のひとつは、引退後に繁殖入りすること。基本的に牝馬の場合は現役時代に活躍できなくても(それこそ未出走でも)近親に活躍馬がいるなどの血統背景があれば繁殖牝馬になれるケースが多いが、牡馬の場合はG1を勝つなどの実績がないと種牡馬入りへの門は開かないことが珍しくない。

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 それどころかG1を勝っても必ずしも種牡馬になれるとは限らない。競走馬生産には時代によって血統のトレンドなどがあり、時流にそぐわない(需要がない)と判断されれば引退後は乗馬などへの転向を余儀なくされる。最近ではいずれもハービンジャー産駒のペルシアンナイト(マイルチャンピオンシップ)とブラストワンピース(有馬記念)が種牡馬になれなかったのが記憶に新しいところだ。

 その一方で、目立った成績を残せなかったにもかかわらず繁殖入りし、活躍馬を出すケースもあるのが競馬の難しいところでもあり、面白いところでもある。今回はそうした馬たちを何頭か紹介してみようと思う。

 実績不足の牡馬が種牡馬になるケースで多いのは、やはり近親に活躍馬がいるパターン。特に名馬と父母が同じ全兄弟は代替の種牡馬として生産地から求められることが昔から数多くあった。

 日本競馬史上に残る名馬ディープインパクトの全兄ブラックタイドは、3歳春にスプリングステークスを勝ってクラシック候補となったものの、皐月賞で16着に大敗するなどその後は1勝もできず。22戦3勝で引退した。しかし賢弟の威光もあって種牡馬入りを果たすと、産駒からG1を7勝したキタサンブラックが出現。そのほかにも重賞勝ち馬が何頭か現れるなど、良血の底力を証明した。ちなみにディープの全弟で3戦1勝で引退したオンファイアも、種牡馬入りして重賞3勝のウキヨノカゼを出している。

 最近の例では、菊花賞と有馬記念を勝ったサトノダイヤモンドの全弟サトノジェネシスがいる。この馬の場合は「良血」プラス「未完の大器」の総合評価での種牡馬入りと言っていいだろう。

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「未完の大器」から名馬誕生も