ナダルさん(撮影/中西正男)
ナダルさん(撮影/中西正男)

 やさしい先輩に囲まれて、ものすごく助けてもらったし、ありがたい環境でした。でも、逆に言うとぬるい環境でもあった。それを痛感したのが2015年に「キングオブコント」で優勝して東京に出てからでした。

 チャンピオンとして注目はしていただき、優勝のご褒美的にバラエティーをまわる“一周目”の動きはいただけるんですけど、他の大会も含めチャンピオンはどんどん出てきます。

 それと、僕らは早めにポンと東京に行ったので、いつもパスを出してくださっていた先輩はまだ大阪にいらっしゃる。となると、各番組をまわっても優勝者としての一般的なパスは出してくださるんですけど、ナダルを踏まえた上でのパスはないんですよ。もちろん、それが当然のことなんですけど。

 そして、一周目が落ち着いてくると、MCの方々は僕らに振るというよりも、女優さんとか、ジャニーズの方に振る方がウケやすいので、僕らはそこにチャチャを入れる役割を求められるようになるわけです。

 でも、それは大阪時代には全くやっていないことなので、実はそこのスキルはほとんどない。その結果、仕事が沈んでいって、1年で一気に仕事がなくなりました。

 相方の西野とも「1年でこれはヤバいぞ」と話し合った結果、ひな壇にいても振られる数は限られているし、そこでニコニコしてても仕方ない。そんなもん、何も仕事をしてない。そう考えるようになっていったんです。

 そこから「水曜日のダウンタウン」(TBS系)などで、僕が追い詰められて暴言を吐くという形が少しずつ出てきて、反応をいただけるようになった。その手応えもあいまって、マイルドなことをやっている場合ではない。本当に思っていることをグッと出して、摩擦を恐れずに出るしかない。その覚悟が強くなっていって、いつしか今の形になりました。

 ただ、僕がやっていることが広く一般的に当てはまるかというと、これは難しいところだとも思います。

 ずっと周りに気を使ってしんどい人はたくさんいると思います。これは僕の考えですけど、最低限のコミュニケーションを成り立たせるためのいい人の部分、これは必要だとは思います。どの世界でも。

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