週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「心臓手術」の解説を紹介する。

*   *  *

 ひとくちに心臓病といっても、狭心症、心筋梗塞、心臓弁膜症、大動脈瘤(りゅう)、大動脈解離などさまざまある。

 ごく簡単に説明をすると、「狭心症」「心筋梗塞」は、心筋に栄養を送り心臓の働きを維持するための「冠動脈が狭くなる、詰まる」というもの。「心臓弁膜症」は、心臓を構成する4つの部屋(心室・心房)の出口にある「扉(弁)の開け閉めの不具合」。「大動脈瘤」「大動脈解離」は、大動脈という身体の中で最も大きい「血管に瘤(こぶ)や亀裂が生じている状態」だ。

 心臓病の治療も他の病気と同様に、低侵襲治療が選択できるようになった。前述の病気はそれぞれ、「手術」と「カテーテルによる治療」の選択肢がある。

■手術もカテーテル治療もそれぞれ進化

 狭心症・心筋梗塞では、詰まった血管部分のう回路を作る「バイパス手術」と、冠動脈の詰まった部分を、カテーテルに装着した「ステント」という金属製の網で広げる「経皮的冠動脈形成術(PCI)」がある。

 心臓弁膜症のうち、大動脈弁が狭くなり石灰化した「大動脈弁狭窄症」では、手術なら弁を取り換える「大動脈弁置換術」を、カテーテル治療なら問題の弁に人工弁を装着する「経皮的大動脈弁置換術(TAVI)」が選択できる。僧帽弁という弁が閉まりにくくなる「僧帽弁閉鎖不全症」では、弁のかたちを整える手術「僧帽弁形成術」と、カテーテルを使って閉じにくくなった弁をクリップで止める「経皮的僧帽弁接合不全修復術(マイトラクリップ)」がある。

 大動脈疾患では、患部を人工血管に置き換える「人工血管置換術」、または患部にカテーテルでステントを入れて補強する「大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR / EVAR)」をおこなう。

 手術も低侵襲化が進み、従来の胸の真ん中の胸骨を大きく開く手術に加え、肋骨の間を5センチ程度切開するだけですむ「小切開低侵襲心臓手術(MICS)」をおこなう病院も増えつつある。ただし、安全性と確実性を担保した手技の高い手術を実施している病院・医師を選ぶことが重要だ。カテーテルの治療も、抜本的、根治的な治療でない場合もあり、選択は慎重におこないたい。

次のページ
心臓弁膜症の治療選択肢とは