週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは「乳がん手術」の解説を紹介する。

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 乳がんは、母乳を作る「乳腺」の組織にできるがん。2018年には年間9万3000人が乳がんと診断されており、女性の11人に1人は一生のうちに乳がんと診断される計算になる。乳管内にがんが留まっている「非浸潤がん」と、乳管の周囲にまで広がっている「浸潤がん」に大別され、がんの広がりや大きさ、転移の有無などにより病期(ステージ)が決まる。

 乳管の周囲には多くのリンパ管・血管が通っており、乳がんはまわりのリンパ節やほかの臓器(骨、肺など)に転移しやすい特性がある。一方で、乳房のしこりに気づくことで自分で発見できるがんのひとつといわれ、日常でのセルフチェックや定期検診などで早期発見できることが大切だ。

■近年は薬物療法の進歩が著しい

 乳がんは、手術によりボディイメージが変化する可能性がある。がんの大きさや位置により、大きく切除すると見た目の変化は避けられなくなるが、小さく切除し、万が一がんが残存した場合には再発リスクにつながる可能性がある。

 治療においては、まずがんをしっかり取り切り、根治を目指すことが最優先となるが、整容性(外見を整え保つこと)についても考慮し、気持ちの折り合いをつけて治療法を選択することが求められる。比較的若年での発症が多い傾向もあり、仕事や家庭など、患者それぞれの社会・生活背景を考慮した治療選択が重要だ。

 治療法には手術と薬物療法、放射線治療があり、近年ではとくに薬物療法の進歩が著しい。新たな薬の登場により、術前術後の薬物療法だけでなく、再発・転移後の治療においてもひとり一人に応じた個別化治療がおこなわれるようになっており、良好な予後につながることが期待されている。

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乳房を温存する手術の後は放射線治療が必要