週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

 早期乳がん治療の基本は手術でがんを切除することであり、放射線治療や薬物療法を併用することもある。手術の方法は、乳房の一部を切除する「乳房温存術(部分切除)」と、乳房をすべて切除する「乳房全切除術(全摘)」に大別される。

 部分切除には乳房を温存できるメリットがあるが、残した乳房の再発リスクを低減するために術後放射線治療が必要になる。全摘では再発のリスクを減らせる一方、ボディーイメージは変化する。ただし、切除後に乳房を再建することが可能だ。

 切除方法は、がんの大きさや広がり、位置などと患者の希望をふまえて選択することが望ましい。広島市立広島市民病院の伊藤充矢医師はこう話す。

「早期がんだから温存、進行がんだから全摘が適しているとは限りません。早期でもがんが乳房内で広範囲に広がっている場合は全摘の適応となり、やや進行していても乳房内の狭い範囲にがんがとどまっている場合は温存して薬物療法を併用します」

■乳房の変化、予後も聞いて治療を選択

 乳がん治療では整容性(外見を整え保つこと)も選択の判断材料となるが、乳房を温存した場合も、がんの大きさや位置によっては整容性が保たれないことも。愛知県がんセンターの岩田広治医師は、「乳房の変化を予測して説明する」と話す。

「その人のがんの大きさや位置などにより、術後に乳房がどのような形になりそうかをお伝えします。その治療による予後や整容性の変化などを十分に説明した上で患者さん自身に選択してもらうことが大切と考えます」

 乳房を温存した場合、再発リスクを低減するため、術後放射線治療に薬物療法を併用することも。

 乳房全切除術を選択した場合は、術後に乳房を再建するか否かの選択をする。乳房再建術は、乳房全切除術と同時におこなう「同時再建」と、手術後に期間をあけておこなう「二次再建」がある。また、再建に自分のおなかや背中などの組織を使用する「自家組織」と、人工物を使う「インプラント」という方法がある。

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