入試不正が明るみになり、東京医大正門前で抗議活動する人たち(2018年8月)
入試不正が明るみになり、東京医大正門前で抗議活動する人たち(2018年8月)

 大学の医学部医学科の不適切入試が2018年に公になってから約3年半。文部科学省が公表した21年度の全国国公私立大学医学部の合格率で、男性13.51%、女性13.60%となり、データがある13年度以降、初めて女性が男性を逆転した。男性が女性より合格率が高い大学の割合も70.37%(18年度)から44.44%(21年度)になった。目覚ましい変化だが、あれから不当な差別はなくなったのだろうか。データをもとに、医学部の入試差別に詳しい予備校に実態を聞いた。

【データ】全国80大学医学部の男女合格率、4年でどう変化した?<全3ページ>

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 2018年7月、東京医科大の理事長が文部科学省の私立大学支援事業に選定する見返りに、文科省元幹部の息子を一般入試で加点して合格させた問題が発覚。これを受け、8月に文科省は全国81大学の医学部医学科を対象とした緊急調査を実施した。12月に最終報告を発表し、10大学の入試に「問題がある」と指摘した。

 指摘されたのは、東京医科大、日本大、聖マリアンナ医科大、岩手医科大、昭和大、順天堂大、北里大、金沢医科大、福岡大の9私大と、国立の神戸大。神戸大を除く9私立大学は、「日本私立学校振興・共済事業団」の判断で、国からの私学助成金の不交付や減額を受けた。不利益を受けた元受験生らによる裁判に発展したケースもあり、大学による是正が進んでいる。このうち、「性別で差別をした事案」として指摘を受けたのは、順天堂大、東京医科大、北里大、聖マリアンナ医科大の4大学だ。

 医学部予備校「ACE Academy」(東京)代表で医師の高梨裕介さんは、不正入試が発覚した翌年である2019年度からの変わりようをこう話す。

「例えば、第三者委員会から『女性差別を否定できない』と指摘されていた昭和大では、1年次に入る寮の収容人数のため『男性7割、女性3割』という入学者の配分があると医学部受験業界では噂されていました。ところが、問題指摘を受けてから昭和大に合格する女性が塾生にも増えましたし、実際に進学した当塾の塾生から『大学側が寮を変えるとバタバタしている』という報告を受けました。これまで、入学者数で差をつけている大学を受けない女子学生もいましたが、今では受験生の認識も変わっています」

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指摘された大学以外で不正はなかったのか?