日本旅行から発注を受けたマーソ社は、自民党人脈とゆかりがある。同社は2015年に「Sシステム」の子会社として設立。「Sシステム」は、茨城県では大物自民党議員として知られた西野恒郎氏(故人)が会長を務めていた。さらにマーソ社の経営顧問は、菅義偉前首相のブレーンとして知られる竹中平蔵・元経済財政政策担当相が16年から務めている。同社のこうした事情も、関係があるのだろうか。

 2社に受注の経緯を問い合わせたところ、次のように回答があった

「弊社から回答することは難しい。そもそも今回の件は、弊社が直接(発注を)受けているわけではありません。防衛省様か、防衛省から受注をされた会社様のほうにお問い合わせをいただきたい」(マーソ社の担当者)

「当社は広報業務を承っていません。契約等に関しては防衛省の広報のほうにご確認いただきたい」(日本旅行の担当者)

 では、その防衛省はどうか。防衛省に問い合わせると、今回の契約が日本旅行との随意契約であることを認め、その理由について「一般競争入札の手続きを取った場合、準備に要する期間が確保できない」としている。

 8か月以上が経った中での、今回の対応。情報セキュリティやITシステムに詳しい明治大の齋藤孝道教授は時間的猶予について、「おそらく3回目の話もまた急に決定され、前回と同じように準備期間がなかったのでは」と見解を話す。「システム開発は設計段階からコストが掛かるので、『次に使えるように』と使う予定がないシステムを設計することはしません。前回乗り切ったので、今回もそれで行くのでしょう。最善とは言えないけれど、妥当な判断だと思います」

 大きなリスクを抱えながらも、走り抜けざるを得ない防衛省。今回の自衛隊大規模接種はシステム面だけでなく、接種能力についても大きな課題が残る。東京会場は現在、1日あたりの接種人数がわずか720人。菅政権下で実施した昨年は、1日あたり1万人接種可能だったが、今年は昨年比93%減と大幅にダウンした。この接種能力は、沖縄県石垣市の接種会場(1日1200人)や神戸市(1日4000人)を下回り、政府が「大規模」と銘打つには、看板倒れの感は否めない。

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接種能力が大幅ダウンの要因