「プラットフォーム」とは、様々なサービスや機能を動かすための共通の基盤、土台のこと。韓国のエンタメ界ではさらに深読みする声もあり、「社名からエンタテインメントという文字を消したことは、音楽事務所からITプラットフォーム企業へ変わる布石では」とも噂された。

 HYBE社の二大株主はパン・シヒョク氏(33・7%)と、モバイルゲーム最大手の「ネットマーブル」(19・3%)だ。ネットマーブルはパン氏の従兄、パン・ジュンヒョク氏(同社CEO)が2000年に八人の仲間と共に立ち上げた企業で、現在はBTS関連のゲームも開発している。

 以前からHYBE社にはIT分野に対する視野があった。HYBE社の子会社beNX社は、すでに2019年6月からファン同士やファンとアーティストをつなぐモバイルアプリ「ウィバース(Weverse)」を展開していた。

 ウィバースはアーティストのファンのためのSNS的なサービスだ。さまざまな言語の翻訳機能も持ち、ファンの投稿に対してアーティストからも直接コメントを受け取れることが最大の強みとしている。韓国の大手証券会社は、ウィバースのプラットフォームの価値を六兆ウォン(約6000億円)と評価している。

 2021年に入ると、HYBE社の野心的な動きが加速化することになる。
 まず1月、日本では「LINE」で知られる韓国の大手IT企業「NAVER」が、ウィバースを運営するbeNX社に投資・提携することを発表。

 NAVERの展開している「VLIVE」という動画や情報を配信するサービスをbeNX社に譲渡し、ウィバースに統合することになった(beNX社の社名も、ウィバースカンパニーに変更することになる)。「VLIVE」はインスタグラムなどに似た、韓国ではよく知られていたサービスだ。多くのアーティストたちがアカウントを持ち、イベントなどの事前告知や写真、動画などをアップしており、ファンならインストール必須というアイテムだ。

◆ジャスティン・ビーバ、アリアナ・グランデのマネージメント会社を傘下 

 さらにHYBE社とbeNX社は、大手音楽事務所のYG社の子会社「YG PLUS」に700億ウォン(約70億円)の投資を行い、YG社と戦略的パートナーシップを結んだ。YG PLUSは、アーティストのグッズ製作や小売り、広告を事業としていた会社だ。この提携により、YG社所属の「BLACKPINK」も2021年8月2日からウィバースに合流している。日本に対しても5月、アーティストのPV配信などに強みを持つ「SHOWROOM」との資本提携を発表している。

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ジャスティン・ビーバ、アリアナ・グランデのマネージメント会社を傘下