女性はすりガラス越しに覗かれるのが不気味で部屋の電気を消していた
女性はすりガラス越しに覗かれるのが不気味で部屋の電気を消していた

 仕事は経済紙3紙を読んでIT業界の記事をピックアップし、リポートするというもの。仕事は終電近くまでかかることも多く、次第に睡眠時間が削られていったという。

 三菱電機広報部は「ご本人から業務を満足にこなすのが難しいとの相談があったため、これに応じて負担軽減の措置を取りました」と回答したが、過酷な職場環境だったこともあり、女性が17年6月27日、7月24日、8月21日と、立て続けに3回も倒れて病院に搬送されていた事実も認めた。

 原因は睡眠不足による過労と熱中症だった。倒れた後、床に使い古されたカーペットが敷かれ、内線電話が設置された。内線電話は総務課と産業医のいる診療所にはつながるが、「119番」や外線にはつながらなかった。この時期、女性の携帯電話は壊れていて、修理に出す時間と気力すらなかったという。

「1回目に倒れた時は、救急車で搬送されました。その時、消防隊の人が『えっ、こんなところが職場なんですか』と驚いていました。しかし、2~3回目はタクシーでした。救急車を呼ぶと会社の安全対策に問題があると思われてしまうからでしょう。倒れる前後に体調のことで相談しようとして、診療所に電話をしても予約が取れずに一方的に切られてしまいました」

部屋には外線にはつながらない「内線電話」だけが置かれた。画像は中央労働基準監督署が立ち入り調査をしてまとめた「調査結果復命書」。一部を加工しています
部屋には外線にはつながらない「内線電話」だけが置かれた。画像は中央労働基準監督署が立ち入り調査をしてまとめた「調査結果復命書」。一部を加工しています

 三菱電機広報部は「タクシーはご本人の希望で、産業医がご本人と話をした上で病院で診てもらった方がいいとのことでタクシーで向かった」と回答した。だが女性は取材に「倒れた時に話し合えるような冷静な状況になく、タクシーを希望したことはない」と反論している。

 内線電話について問うと、三菱電機側は「関係会社含め社内のいずれの内線番号にもかけられる電話で、ご本人に話した上で進めた。体調不良などの緊急時には総務部門にすぐに連絡がとれるように直通電話も設置していた」(広報部)と答えた。

 3回目に倒れる前日である8月20日、三菱電機は「全社的な労働時間管理」として、女性の部屋にICカードをかざして施錠解除する装置をドアに設置した。ICカードを触れる位置は目の高さほど。もし倒れたらICカードをかざしてドアを開けることができなくなる。そうなったら、「この部屋で死ぬかもしれない」という恐怖が女性を襲った。そのため、女性は内線電話を倒れた時のために床に置いていた。

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会社がチェックしていた「カメラ」の映像