入手した「自治体向け説明資料」
入手した「自治体向け説明資料」

 今回のドタバタ劇について自民党幹部がこう苦言を呈する。

「10万円給付は高市早苗政調会長が国会で指摘して岸田首相が給付方法について、現金を容認する筋書きにした。当然、岸田政権が迷走というイメージにつながるが、現金が国民に届けば、すぐに挽回できると判断した。閣議決定したことをひっくり返すという荒業を岸田首相はよく決断した。こうした重要政策で永田町や霞が関を束ねる役回りをする実質的な司令塔がいま、官邸で不在となっている。今後に響かなければいいが…」

 公明党幹部もこう話す。

「年末を迎え、現金という声が高まる中、クーポンを声高に主張しても仕方ないでしょう」

 岸田政権の右往左往ぶりに困り果てているのが、10万円給付の事務作業を担う、市町村だ。名古屋市の河村たかし市長は、AERAdot.の取材に対し、こう語った。

「国がいいとなれば、そりゃ現金にしますよ。現金の方がいいに決まっている。クーポンで支給時期が遅くなったりすれば、袋叩きだわ。現金、クーポンと二転三転、国の方向性が定まらず、ツケは事務をやる市町村に押しつけられ、大変だがや」

 今回の10万円給付は当初、子育て支援策として打ち出されていた。だが、10万円現金給付となると経済支援、生活困窮支援という側面もうかがえる。兵庫県明石市の泉房穂市長がこう物申す。

「国の方針が変わり、市役所も振り回されている。明石市は10万円を一括で現金給付することにしました。当初、年内に5万円を給付するという市民への通知を郵送する準備をしていたが、印刷をストップし、内容を変更している。もともと、国は子育て支援と言っていたはず。それなら保育無償化など方法はもっとあります。国が子育て支援か、経済支援かはっきり言わず、いつの間にか現金か、クーポンかという話に軸が移り、大義がわからなくなったことではないか」

(今西憲之 AERAdot.編集部)