岸田文雄首相と木原誠二官房副長官(左)
岸田文雄首相と木原誠二官房副長官(左)

 岸田政権は18歳以下への10万円給付について、ギリギリまで5万円分のクーポン支給に固執した結果、国会や自治体で大きな混乱を招いた。

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 政権は10万円給付に関し、「現金5万円を迅速に給付し、残り5万円相当は来春メドにクーポンを基本として給付を行う」と11月19日に閣議決定までしていた。

 ところが、12月14日の衆院予算委員会で10万円全額を現金給付することを容認せざるを得なくなったのだ。

「財務省が主張する『貯蓄に回るのを回避し、子育て関連の支出に限定するため』という考え方に拘泥し、クーポン給付にこだわるあまり決断が遅れました。官邸は自治体の10万円全額給付を認めないという姿勢をずっと貫き、現金で全額給付する場合には、自治体がクーポン給付をできない事由を記した『理由書』を内閣府へ提出せよという厳格なしばりまで設けていました」(官邸関係者)

 AERA dot.が入手した内閣府の「自治体向けの説明資料」(12月3日付)では、「理由書」の部分に米印がつけられており、「事情の変更等によりクーポン給付ができなかった特別な事由を記したもの」という注釈が入っていた。特別な事由とは「第6波が来たとき」「震災発生など天変地異があった時」などという厳しい条件が付けられたという。

「これは事実上、現金給付を認めず、クーポン給付に縛り付けるものだと、自治体からは不満の声が噴出しました。また、クーポン作成事務にかかる実務的なスケジュールがタイトで、自民党、公明党や各自治体から早く方針を出すよう求められても、木原誠二官房副長官は補正予算成立までは運用方法を示さないと強弁。原則クーポン給付に固執し続けました。しかし、クーポン支給では、967億円という膨大なコストと事務負担が伴う上、支給が夏ごろとなり、当初予定していた進学シーズンに間に合わなくなると自民党幹部から不満が続出。岸田首相の耳に入り、現金給付を認めると急遽、方向転換しました」(同前)

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自民党、首長らの苦言相次ぐ