では、どうすれば男子ツアーは人気回復への道を歩むことができるのか? さらなるファンサービスの向上や選手の認知拡大などは日々、議論されていることだろうが、やはり新スターを生み出すことがシンプルで分かりやすく、そしてインパクトのある方法だろう。

 どの時代でもプロスポーツにはスーパースターは欠かすことができず、男子ゴルフが隆盛を誇った80年代は青木功、尾崎将司、中嶋常幸の「AON」というビッグスターがいた。女子ツアーは2000年代中盤に宮里藍や横峯さくらがツアーで活躍するようになりブームを作り、人気が女子に押され気味だった男子ツアーには、石川が彗星のごとく現れたことで旋風を巻き起こした。もちろん、様々なPR活動など草の根の地道な施策も必要だが、結局は、スターの輩出が人気向上に有効な特効薬となる。

 ただし、スターは待っていても勝手に生まれてくるものではない。そこには、ツアーだけでなくゴルフ界が一丸となりスターを創るシステムを構築し、スターを継続して誕生させることが必要だ。となると、ゴルフは他スポーツに比べこの「スター育成システム」が機能していないのではないだろうか。

 もちろん、現在も個々にはジュニアの育成に注力しているコーチや組織があり、日々、ジュニアのスキルアップに貢献している。育成財団や育成プロジェクトも存在しているし、高校大学などの多くの教育機関でもゴルフ部があり、未来のプロゴルファーが切磋琢磨していることはご承知の通りだ。

 しかし、業界団体で統一された体系的な取り組みは聞こえてこないし、何よりゴルフはジュニア世代への注目が他スポーツに比べてかなり低いと言える。例えば、高校スポーツで言うと、野球には甲子園があるし、サッカーならお正月の高校サッカー、バレーボールなら春高バレー、バスケットボールならウインターカップがあり、それぞれがテレビで中継され注目度も高い。

 高校野球や大学野球ならプロ入りしそうな選手が、日頃から新聞紙面を飾り、高校サッカーの有望ストライカーも卒業後の去就がニュースで扱われることは珍しいことではない。そしてそのような有望株がプロ入りするのだから、当然プロスポーツもさらに注目されるわけだ。

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アマ時代から注目される選手の育成が必要か