音柱の宇髄天元(画像はコミックス「鬼滅の刃」9巻のカバーより)
音柱の宇髄天元(画像はコミックス「鬼滅の刃」9巻のカバーより)

【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

いよいよアニメ版『鬼滅の刃』の遊郭編が始まった。待望の新シリーズでは、美しい「音柱」宇髄天元が登場する。煉獄杏寿郎の死によって悲しみにくれる炭治郎たちは、“ド派手な”宇髄のペースに巻き込まれ、いつものにぎやかさを取り戻していく。情熱的だった煉獄と冷静で飄々(ひょうひょう)とした宇髄。タイプは違えども、炭治郎たち後輩剣士への思いは「柱」として同じであった。煉獄から宇髄、そして炭治郎たちへ継承された“遺志”とは――。<本連載が一冊にまとめられた「鬼滅夜話」が発売されました>

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■煉獄杏寿郎の喪失がもたらした悲しみの“闇”

 炎柱・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)の命が、「上弦の参」の鬼・猗窩座との死闘によって失われてしまった。鬼によってもたらされた暗い“闇”が、煉獄家と鬼殺隊にも押し寄せる。

 それでも、炭治郎、伊之助、善逸は訓練に励んだ。煉獄が言い遺した「君たちを信じる」という言葉を裏切らないためにも、心を奮い立たせ、なんとか立ち直ろうとしていた。しかし、彼らが無理をしているのは明白だった。そんな炭治郎たちの前に現れたのが、煉獄とはまったくタイプの違う「音柱」だった。

■夜の“闇”を斬り裂く「ド派手」な宇髄天元

『鬼滅の刃』遊郭編の公式HPのトップ画像には、「鬼棲む夜を、斬り裂き進め」というコピーが添えられている。これは鬼滅が『週刊少年ジャンプ』(集英社)に連載されていた当時(2017年51号)のカラー扉のアオリ文だった。

 この言葉の通り、夜の“闇”を斬り裂いて、周りをパッと明るくするような、派手な「柱」が登場する。音柱・宇髄天元(うずい・てんげん)だ。198センチ・95キロというたくましい身体、大きな2本の日輪刀、金の腕輪、宝石で飾られた額飾り、目元のメーク、ネイル。そして人が振り返るほど美しい宇髄の顔立ちは、初登場時から際立っていた。

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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宇髄が蝶屋敷で「騒ぎ」を起こした理由