高津監督は現役引退後、ヤクルトのコーチや二軍監督を経て20年から現職に就いた。1年目はチームを再建できず前年に続くリーグ最下位。今年も開幕前の下馬評は高くなかった。FA権を持っていた山田哲人、小川泰弘、石山泰稚という投打の柱の引き留めには成功したものの厳しい戦いが予想された。ところが開幕から首位に離されないようにAクラスを死守。夏場以降は勝負強さを発揮して就任2年目でリーグ優勝と日本一を果たした。

「人間性に加え野球経験が凝縮されているような采配。NPB、メジャー、マイナー、韓国、台湾、BCリーグなど色々な野球を体感した。最下位の悔しさも知っている。現役時代の実績だけではなく監督としての技量を常に磨き器を大きくしようとしているように見える。野村克也さんの影響も感じます。攻守の柱を中心としたオーソドックスな野球がベースだが時に奇襲も仕掛ける。『絶対大丈夫』という言葉の力を大事にしているのもそうです」

「選手個々の見極めの上手さにも驚かされる。青木宣親を使い続けるのは勝負どころへ向けたベテランの集中力を信じていたからだろう。超積極的な塩見泰隆には思い通りにやらせている。日本シリーズ第2戦、高橋奎二に最後まで任せたのも『投げたい』という投手気質がわかっているから。普段からコミニュケーションを欠かさず細かい部分まで観察して周到に準備しているはず」

 ヤクルト時代に4度のリーグ優勝(すべて日本一)を経験するなど、華々しい経歴に目が行きがちだが米国マイナーやアジアでのプレー経験もある。独立リーグ・新潟アルビレックスBCでは12年に兼任監督としてリーグ優勝も果たしている(四国アイランドリーグ覇者とのグランドチャンピオンシップにも勝利)。その後も14年から古巣ヤクルトで指導者の勉強を重ねてきた。一軍監督としては2年目だが、経験を積み重ねた引き出しの多さは他球団監督に引けを取らない。歴史に残る名監督への歩みを我々は見ているのかもしれない。永井氏は同じ監督業の立場から尊敬しかないと語る。

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大学時代から“十八番”だったモノマネ