写真はイメージです(Getty  Images)
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 都心部で働く子育て世代の夫婦が家を買うとしたら、どんな物件が“正解”なのか。そこ一生住むつもりで物件を選ぶよりも、将来、住み替えることを前提にした購入がトレンドだという。つまり、売ることを前提にした購入だ。だが、購入してから資産価値が落ちたり、いざ売る際になかなか買い手がつかなかったりしたら、のちの人生設計も狂ってくる。最近の不動産事情を探った短期集中連載「それでも夫婦は東京に家を買う」。今回は物件選びのポイントを不動産のプロに聞いた。

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 まずは「こんなはずじゃなかった」と頭を抱えてしまったBさんのケースを紹介しよう。

 埼玉県内に、10年前にマンションを購入したBさん。妻の実家近くにある、最寄り駅から徒歩18分の4LDK(81平米)の新築物件を3500万円で購入した。うち3300万円は住宅ローンを組み、月々の返済額は約12万円。返済も順調だった。

 しかし、ローンがあと20年ほど残っている時点で、仕事と子どもの学校の関係で、どうしても引っ越さないといけなくなり、売却したいと考えた。現在の売却想定額を査定したところ、金額は1800万程度だという。住宅ローンの残債はまだ2400万前後あり、売却想定価格をはるかに上回っている。「ならば貸せないか」と考え、今度は家賃を査定してもらったところ、相場から月10万5千円前後を算出された。Bさんの物件は駅から距離があり、購入時には営業していた近隣のスーパーマーケットなどが撤退し、買い物にも不便という環境要因が響いた。毎月12万の住宅ローンの支払いを考えると、貸しても赤字という計算になる。

 Bさんは、購入時点では生涯住むつもりだった。子どもの成長などライフステージの変化に対応する間取りを考え、それが無理ない予算で買える場所という視点から物件選びを始め、「まったく知らない土地に行くよりは、子育ても考えて妻の実家近くにしよう」と決めた家だった。試算が狂い、Bさんは今、人生設計を見直している。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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