中日の落合博満監督のコメントに西武ナインも奮起?
中日の落合博満監督のコメントに西武ナインも奮起?

 日本シリーズの舌禍事件といえば、1989年のシリーズ第3戦で勝利投手になった近鉄・加藤哲郎の「巨人は(パ・リーグ最下位の)ロッテより弱い」発言を連想するファンも多いはずだ。

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 実際の加藤の発言は「シーズンのほうがよっぽどしんどかった。相手も強いし」で、巨人打線限定の話だったのだが、これに尾ひれがついて、投打ともに巨人が弱いと言ったかのように報じられてしまった。

 この結果、加藤はヒール役になり、3連敗で王手をかけられた巨人が怒涛の4連勝で逆転Vを達成したことから、“シリーズの流れを変えた発言”として語り継がれることになった。

 短期決戦の日本シリーズは、ちょっとしたきっかけで流れが変わることが多く、時には個人の発言も影響を及ぼすようだ。“加藤発言”以外にも、結果的にシリーズの流れを変えたとされる3つの発言を紹介しよう。

 シリーズ前に「にっくき巨人」と挑発したのが、02年の西武・伊原春樹監督だ。

 4年ぶりのリーグVを決めた西武は9月30日、本拠地・西武ドームで優勝セレモニーを開催。日本一を期待する地元ファンの前で、伊原監督は「にっくき読売巨人軍と戦いますが、必ず日本一になることを誓います」と約束した。

 過激な発言は「アンチ巨人の人もいるから、ちょっと盛り上げてみました」という理由からだったが、その後も“伊原節”は止まらない。

 10月17日に巨人が投手の癖を見抜かれないよう“伊原の目”対策の秘密練習を行うと、「シリーズだからといって、特別なことをやってもねえ」と皮肉めかし、シリーズ開幕前日の10月25日には「4つ勝つことしか考えていない。夢で(巨人に)2つ勝っているし、今日あたり夢を見て、3勝目をいただこうかな」と本番前から王手をかけたような口ぶりだった。

 ところが、いざ蓋を開けてみると、西武は見せ場を作れず、ストレートの4連敗。伊原監督も「短期決戦は勝ったほうが強い。素直にジャイアンツは強かった」と兜を脱ぐ羽目になった。

「にっくき」などと挑発せず、「ウチは胸を借りるだけ」と謙虚に振舞う作戦のほうが、良かったような気もするが……。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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相手を奮起させた“上から目線”発言