これだけならまだしも、「ナゴヤドームに帰ってこない可能性は大いにありますよ。期待してください」と第5戦での日本一決定をにおわせたばかりでなく、「西武の動きよりウチが上だ。でなければ、強いセ・リーグのチームを倒してトップにならないよ」と語気を強めた。当然、パ・リーグ2位から勝ち上がってきた西武はカチンときたはずだ。

 中日は3勝2敗と王手をかけて名古屋に帰ってきたものの、守りのミスなどもあって、第6戦、7戦と連敗。50年ぶりの日本一を逃した。「第1戦から第7戦まですべての勝負どころをオレが見誤ってしまった。負けた責任はすべてオレにある」と落合監督も反省の弁。

 確かに投手交代のタイミングを誤るなど、采配ミスもあったが、やはり「大いにありますよ」発言が、自軍、相手の双方に少なからぬ影響を与えたであろうことは否定できない。

 短期決戦では、相手を“口撃”したり、「このシリーズは貰った」的な発言を慎み、「一戦必勝」に徹するのがよろしいようで。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2020」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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