瀬戸内寂聴さん、2019年5月に行われた秘書の瀬尾まなほさんとの対談で見せた笑顔(撮影/楠本涼)
瀬戸内寂聴さん、2019年5月に行われた秘書の瀬尾まなほさんとの対談で見せた笑顔(撮影/楠本涼)

 瀬戸内寂聴さんが9日、京都市内の病院で心不全で亡くなっていたことがわかった。99歳だった。

【写真】これは貴重!剃髪前の若かりしころの瀬戸内さんの一枚

 最近は体調を崩し、入院中だった。瀬戸内さんは週刊朝日で美術家の横尾忠則氏と『往復書簡 老親友のナイショ文』と題して連載をしていたが、今年10月15日号に<瀬戸内が風邪をひいてしまい、寝込んでいる>として、秘書の瀬尾まなほさんが代理で連載を執筆。その後、今週発売した11月19日号まで、6号連続で代理執筆が続いていた。

 近年の瀬戸内さんから自身の死を意識した言及が多かった。2020年6月19日号では<自分の死がいよいよ近づいてきたと感じる>と綴っていた。また、今年1月22日号では<私はたぶん、今年、死ぬでしょう。(数え年で)百まで生きたと、人々はほめそやすでしょう>と述べていたが、今年2月26日号のインタビューでは<死ぬまでにもう一本、長編小説を書きたいのよ>と抱負を語っていた。

 瀬戸内さんが休んでいる間は、連載中の『往復書簡』で秘書を通じて瀬戸内さんの様子が報告されていた。10月22日号では<瀬戸内の様子はおかげさまでだいぶよくなりました>と述べていたが、10月29日号では<風邪をひいて治りかけていた瀬戸内の体調がまたぶり返してしまった>と綴っていた。

 一方で<弱っている瀬戸内を見ると、最近特に不安になります。私にとっては「無敵」な存在だったからです。「100歳」という数字をみれば誰でも高齢者ということはわかります。けれど瀬戸内はそういう括りに入らず、いつも超人的に元気だったからです。しかし、この頃はそうではなく、風邪でもひかれるとそれが命とりになることもあるので、私はいつも怯えています。願いは、「無事に年を越せますように」「5月の100歳の誕生日を迎えられますように」それだけです>と不安も記していた。

 瀬戸内さんの様子が最後に紹介されたのは11月5日号で、そこには<だいぶ体調は良くなり、普通に冗談も言え、アイスクリームも食べ、いつもの瀬戸内に戻りつつありますが、しばらく寝ていたため体力が落ちており、書く気力がまだ起きない状況です。最近リハビリも開始し、体力を戻すために歩き始めたりしているので、ご安心ください>と書かれていた。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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瀬戸内さんの様子が最後に報告されたのは11月5日号