皮膚に異常があれば、病気を疑って皮膚科を受診するものですが、自覚症状がない病気もあります。もっとも怖い皮膚の病気は、皮膚がんで多くは無症状です。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。
* * *
11月12日は1112で「いい皮膚」の日です。皮膚に関する一般公開講座が全国で行われています。大きな都市では皮膚科医会という集まりがあり、その団体による皮膚疾患の啓発活動がこの日に合わせて行われます。
COVID-19の流行により、2020年4月は病院への受診控えがありました。病院内での新型コロナ感染を恐れ、すこしの体調不良は我慢する傾向があったようです。現在、少しずつ病院への受診患者数は回復していますが、コロナ前に戻ったかというとそういうわけではありません。
ヨーロッパからの報告になりますが、慢性じんま疹の多くの患者さんがコロナの影響で治療を中断されたとあります(PMID: 33284457)。また、がんの診断や治療の遅れを指摘する報告もあります。
私の専門とする皮膚科からは、痛くない、かゆくない皮膚病に注意していただきたいと思います。とくに皮膚がんは無症状のことが多いです。ほくろが大きくなってきた、黒いシミができたという場合、悪性黒色腫(メラノーマ。ほくろのがんと呼ばれる)や基底細胞がんの可能性があります。
悪性黒色腫は10万人に1人から2人発症する希少がんです。近年では、紫外線の増加により増加傾向にあります。人種別では白人は黄色人種の10倍から20倍多いのですが、日本人では白人に比べ悪性黒色腫が進行してから見つかるケースが多いです。それは、疾患啓発の違いによります。白人では悪性黒色腫に対する一般の人の認知は進んでおり早期で発見できるのに対し、日本人では悪性黒色腫がまだ十分に知られていない可能性があります。
また、日本人では発生部位が見つけづらい場所による影響もあると考えられます。悪性黒色腫は海外では体にできやすいのに対し、日本人は足の裏や口の中の粘膜などに多くできます。これらの場所にできたほくろやシミは、大きくなるまで気がつきにくいです。